青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

サンタクロースが歌ってくれた 原作:成井豊(青春アドベンチャー)

作品:サンタクロースが歌ってくれた
番組:青春アドベンチャー
格付:A+
分類:幻想(日本)
初出:1993年12月6日~12月17日(全10回)
原作:成井豊
脚色:吉田玲子
演出:川口泰典、外山正恵
主演:渡辺いっけい

大正5年9月。浅草十二階で出会った芥川龍之介と平井太郎(後の江戸川乱歩)。
ふたりはコンビを組んで素人探偵となり、謎の大盗賊・黒とかげと対決することになる。スリルとサスペンス、愛と友情に満ちた物語の始まりだ!
...これは、僕、高校教師で演劇部顧問の成井が、演劇部の高校生のために考えた新しい演劇のシナリオだ。
自分としてはそれなりの傑作になる予感はある。でも、筆は一向に進まない。
もう、年末のクリスマスイブだというのに完成したのはたったの4ページ。
それでも気を取り直してワープロに向かっていると、突然、ワープロが不思議な動作を始めた。
そして、どこからともなく聞こえてくる登場人物達の声。
そんな馬鹿なと思っていたのもつかの間、突如、大音響とともに何かが爆発し、僕のシナリオの登場人物達が、目の前に現れたのだ...

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成井豊さん原作で演劇集団キャラメルボックスで講演された舞台脚本と、そのノベライズ版を原作とするラジオドラマです。
青春アドベンチャーが原作として採用している作品は小説又は漫画が大半を占め、演劇をベースとするドラマはごく少数です。
ただ、例がないわけではなく、2013年放送の「泥の子と狭い家の物語」や、2002年放送の「エドモンたちの島」は演劇が先行した作品です。
いずれの作品も演劇の脚本を原案としつつも、かなり大幅な改変が加えられてラジオドラマ化されています。
しかし本作品は、ラジオドラマ化の前に一旦ノベライズされていること、原作(舞台)とは異なる脚本家により脚色されていることから、本ブログでは、原作付き作品(原作:成井豊、脚色:吉田玲子)という扱いにしています。

さて、本作品では、芥川龍之介や江戸川乱歩がワープロから飛びだしてくるのですが、ここで登場するのは、あくまで高校教師である成井先生の頭の中にあるフィクション上の人物(登場人物自身もその自覚がある)であり、実在の人物がタイムスリップしたわけではありません。
黒とかげも江戸川乱歩さんの小説「黒蜥蜴」の登場人物で、もちろんフィクションの人物です。
ちなみに、同様にフィクション上の登場人物が現実世界に出現するという作品としては、新井素子さん原作の「絶句」(「ふたりの部屋」時代の作品)があります。
また、本作品はもともとの舞台版は「劇中劇」の要素があるらしいのですが、このラジオドラマ版は書きかけの脚本から登場人物が飛び出てくる形であるため、劇中劇の部分はほとんどありません。
しかし、面白さのポイントが、劇中劇の世界と現実世界の二重構造というか、入れ子構造にあるのは本作品も同様で、本作品中でも、シナリオ上の人物と、それを演じる予定になっている生徒達とを微妙に重ね合わせながらストーリーが進みます。
なかなか面白い構成です。
なお、作品を一言で言うと「クリスマスの夜には奇跡が起こる」というもので、本作品の15分×10回の放送時間の中で進行する作中の時間は、12月24日の夕方から深夜0時までのごく短い時間になります。
内容はまあ行ってみればドタバタで、なぞ解きがあるようなないような、作品のテーマもわかったようなわからないような作品ですが、短い時間にぎゅっと濃縮された楽しい娯楽作品です。
是非、ご試聴あれ。

なお、作中にでてくる染井高校の先生や生徒の名前が、舞台版に出演された役者さんの名前から取られています。
原作をリスペクトした、ちょっとした小ネタだと思います。
面白いですね。

(ラジオドラマの役名)  (舞台版の関係者の名前)
西川(生徒)       西川浩幸(舞台版で芥川役を演じた役者)
上川(生徒)       上川隆也(舞台版で太郎役を演じた役者)
近江谷(先生)      近江谷太朗(舞台版で警部を演じた役者)
成井(先生)       成井豊(舞台版の脚本家)


本ラジオドラマのキャストは、芥川龍之介役が渡辺いっけいさんで、平井太郎(江戸川乱歩)役が上川隆也さんです。
上川さんは、キャラメルボックスのご出身で、舞台版「サンタクロースが歌ってくれた」でも同じ太郎の役を演じていました。
一方、渡辺さんは元劇団☆新感線のご出身であり、近江谷警部(近江谷先生)役の田山涼成さんと成井先生(兼ナレーション)役の浅野和之さんは劇団夢の遊眠社のご出身です。
渡辺さんは「北壁の死闘」や「ジュラシック・パーク」にも出演されている常連出演者でした。
また、ゆきみ役の前田悠衣さんを始めとして、姿晴香さん、上代粧子さん、若葉ひろみさん、華村りこさんなど、女性の出演者は宝塚歌劇団のご出身者が固めています。
特筆すべきは前田さんと田山さんです。
前田さんは「五番目のサリー」や「悲しみの時計少女」など、ちょっと気味の悪い役が多いのですが、本作品では全編、甲高い声でハイテンションに喋り捲っています(前田さんの学生役にはちょっと無理がある気がする)。
また、田山さんも「北壁の死闘」のシリアスな演技とは異なり、ちょっと感覚のズレた近江谷警部を怪しくハイテンションで演じています。
その結果、二人ともかなり胡散臭いギャグメーカーになっています。
その他も、渡辺さんと若葉さんが主役とヒロインを務められた「北壁の死闘」のほか、上川さんの「天使のリール」、渡辺さんと前田さんがメインキャストだった「悲しみの時計少女」・「五番目のサリー」、浅野さんがナレーション(兼バシレイオス提督役)でご出演されていたましたアドベンチャーロード時代の名作「西風の戦記」(出演に夢の遊民社の名前がコールされた番組)など、本作の出演者は他の多くの作品に出演しています。
そのため、安心して聴くことができる布陣なっています。
ちなみに、本作品が放送されたのは1993年。
上川さんや渡辺さんがテレビドラマ等で大活躍されるようになるのは少し後のことになります。
つまり本作品は、キャラメルボックスの人気脚本を、後にテレビドラマで活躍されることになる役者さんを含む、人気劇団(キャラメルボックス・新感線・夢の遊民社)の看板俳優と、宝塚出身のたくさんの女優さんたちで演じていることになります。
振り返ってみるととても豪華な配役ですね。


スタッフは脚色が吉田玲子さんで、演出が川口泰典さん・外山正恵さんです。
吉田さん脚本の作品を紹介するのは本ブログでは初めてです。
担当された作品数は少ないですが、本作品のほかにエイミー・トムスン原作の「ヴァーチャル・ガール」や東野圭吾さん原作の「分身」などを脚色されています。
近年ではアニメの脚本を多く手がけられているそうで、人気の「けいおん!」や「ガールズ&パンツァー」ではシリーズ構成(各話の脚本家のまとめ役)をされているそうです。
一方、演出の川口泰典さんは、青春アドベンチャーで多くの傑作を世に送り出している方です。
また、もうひと方である外山さんですが、再放送時には「一木正恵」さんというお名前で表記されていました。
紅はこべ」(1994年放送)も同様の状況です。
何らかの事情(ご結婚?)で改名されたのかも知れません。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらの記事をご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。





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不思議屋薬品店 作:北阪昌人ほか(青春アドベンチャー)

作品:不思議屋薬品店
番組:青春アドベンチャー
格付:B-
分類:多ジャンル
初出:2002年11月18日~11月29日(全10回)
作 :(下表のとおり)
演出:吉田努
主演:堺雅人、増田未亜

新進気鋭の脚本家10人が、オリジナルラジオドラマを競作する「不思議屋」シリーズ8作品中の1作です。
本ブログでは「不思議屋」シリーズの作品は、「不思議屋料理店」(2007年)に続き2作品目の紹介です。

不思議屋シリーズでは原則として、ベテラン声優の永井一郎さんが、そのシリーズにあった「不思議屋」(本作品の場合は「不思議屋薬品店」)の店主として登場します。
そして、各作品ごとに登場する何名かの出演者とともに、1話完結の作品を演じます。
本作品の出演者は、堺雅人さんと増田未亜さんのお二人。

堺雅人さんといえば、この記事を書いている2013年に、連続テレビドラマ「半沢直樹」で、「倍返しだ!」という決め台詞とともに、一躍大ブレイクした俳優さんです。
そもそも2004年の大河ドラマ「新選組!」の山南敬助役で有名になった堺さんですが、本作品はその「新選組!」へ出演する前の時期の作品でした。
青春アドベンチャーでは、出演者として舞台俳優さんを積極的に採用しています。
そのため、上川隆也さん(「サンタクロースが歌ってくれた」など)、渡辺いっけいさん(「北壁の死闘」など)、段田安則さん(「西風の戦記」)など、後にテレビドラマの常連になる人たちが、ブレイク前に出演していた事例が意外と多いのです。
堺さんも、すでに朝の連続テレビ小説「オードリー」(2000年)には出演されていたものの、本格的なブレイク前に本作品に出演されていたことになります。

一方、各話のヒロインを務める増田未亜さんは、女優・元アイドルの方で、1990年代から2000年代の初頭までNHK-FMのラジオドラマに多数出演されていました。
個人的に思い入れが強いのは、1993年に放送された「ふたり」の北尾実加役。
姉妹の妹役で、少し舌足らずなしゃべり方が、とても役にあっていました。
本作品はそれから約10年後に制作された作品で、とてもはっきりとした大人っぽい発声になっているのが印象的です。

不思議屋店主を演じる永井一郎さんは、サザエさんの「磯野波平」役で有名ですし、他の記事(不思議屋料理店、夏の魔術幽霊海戦機動戦士ガンダムつながり)にもたくさん永井さんことを書いているので、そちらをご覧下さい。
どの作品でも、まさにベテランの名にふさわしい自然で充実した演技です。

さて、本作品の各話の脚本家と、粗筋、一言感想は以下のとおりです。

 
話数 タイトル 作者 ジャンル 格付け 粗筋 一言
1 ユニコーンの憂鬱 北阪昌人 幻想(その他) B- 好きになった女性には秘密があった。彼女を受け入れるため男は不思議屋薬品店の扉を叩くが... いい話だがオー・ヘンリーのアレにそっくり。
2 胸の鍵 山名宏和 幻想(その他) A 彼女の本当の気持ちが知りたい男は、自白剤を求めて不思議屋薬品店を訪れる。 不覚にもオチが読めなかった! 一発ネタだがまずまずの内容。
3 恋のバストアップ大作戦 金沢祥宇 幻想(日本) C+ バストアップし玉の輿に乗るために、女は不思議屋薬品店に駆け込む。 ドタバタコメディー。堺雅人さんのはじけた演技が聴きどころか。
4 アンブレラ 山下君子 幻想(日本) C+ 薬学部をビリで卒業し不思議屋薬品店に勤め始めた男と、客の女の交流。 不思議屋薬品店自体が舞台。わかったようなわからないような幻想的なストーリー。
5 光の風景 前原一磨 幻想(日本) C+ 妻と視力を失った老人が遭遇した、ほんの少しだけ不思議なストーリー。 永井一郎さんが不思議屋店主ではなく、別の役で主役を演じる。日常系の色が濃い。
6 ミスキャスト 松原竜 日常 B- 評論家にミスキャストと酷評された女優が、クスリでトリップして荒れる、荒れる! こちらは増田未亜さんのはじけた演技が聴きどころ。永井さんはほとんど登場せず。
7 ジョジョビャビャの鼻 橋本信之 幻想(日本) C 背中に腫瘍ができた男。腫瘍が取れなければ彼女と別れることになってしまうが...これもさっぱりわからない。結局、腫瘍は取れたのか?男は**になってしまったのか?
8 究極のジェントルマン 丸山(日本) 幻想系 B- 薬の力を借りて、恋人の父親への挨拶に臨むチャラ男。 これもドタバタコメディ。実にどうしようもない話だが、割と笑える。
9 ニジマル 横山玲子 日常 A- 秘伝の薬・ニジマルが、終戦後50年間に亘るふたりの思いをつないだ話。 不思議屋薬品店の話しではなく、それどころか薬の話しですらないという異色作。
10 月とコオロギ 井出真理 幻想(その他) C 飛びたいコオロギと父の目を治したい娘。お薬師に願いを掛ける二人の望みは叶うのか。 コオロギと娘の関係がさっぱりわからない。テーマもオチもわからない。謎の作品。

「不思議屋」の名のとおり、ほとんどの話が幻想的なストーリーです。
例によって、気に入った作品とそうでもない作品があります。
個人的なお勧めは第2話の「胸の鍵」と第9話の「ニジマル」です。
やっぱりショートストーリーだからこそ、「胸の鍵」のような意外性のあるラストが欲しいと思います。
「ニジマル」の方は不思議屋シリーズの一作である必然性がまるでない作品。
脚本家の横山さん、自由にやってますねえ。

なお、全体でみると、“C+”と“C”が多くて平均点は伸びませんが、意外と悪くない作品も多いです。
「薬品」というのはショートストーリーにあったテーマだと思います。

【不思議屋シリーズ作品一覧】
全部で8作品制作された不思議屋シリーズの作品一覧はこちらです。
是非、他の作品の記事もご覧ください。


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