青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

イズァローン伝説 原作:竹宮恵子(FMシアター)

作品:イズァローン伝説
番組:FMシアター(ダミーヘッド・アドベンチャー)
格付:C
分類:異世界
初出:1994年1月2日(全1回)
原作:竹宮恵子
脚色:前田悠衣
演出:川口泰典
主演:ありす未来

これは、人と自然がまだ分かたれず、神秘が生活とともにあった頃の物語。
人々は樹海の中に埋没する小さな国々に分かれて暮らしを営んでいた。
その中のひとつ、イズァローン王国。
この国の人間は、男女どちらでもない両性体として生を受け、成人するまでに自然に男女に分かれていくという不思議な体質を持っていた。

そんな王国に生まれたふたりの王子、王の実子ティオキアと亡くなった兄王の息子ルキシュ。
お互いを尊重し、良好な関係を保っていたふたりだが、年長のルキシュが男性となり、そして初陣を飾る頃から、ふたりの関係には微妙な変化が生じ始めた。

――――――――――――――――――――――――――

本作品「イズァローン伝説」は著名な少女漫画家である竹宮恵子さんの漫画を原作とするラジオドラマです。
竹宮さんは、代表作である「地球(テラ)へ…」や、青春アドベンチャーでラジオドラマ化もされた「エデン2185」など、萩尾望都さんと並び少女マンガ界のSFの大家というイメージが強い方です。
ただし、竹宮さんのもうひとつの代表作とされる「風と木の歌」は耽美的な少年愛を扱った作品ですし、「そっち方面」の雑誌「JUNE」にも初期から積極的に参加していたという経歴からもわかるとおり、萩尾さん同様、「そっち方面」でも有名な方でもあります。

本作品も上記の粗筋だけ読むと、今風の「異世界ファンタジー」のように見えますが、「生まれたときは両性体」という設定あたりに、(これも今風に言うと)濃厚な「腐」のにおいを感じますね。
ただし、本ラジオドラマは、同様にNHK-FMでラジオドラマ化された萩尾さんの「マージナル」と比較すると、耽美な雰囲気は希薄です。
よく聞いていると、序盤のティオキアとルキシュの関係や、終盤のティオキアと側近カウス・レーゼンの関係はかなりの「やおい」なのですが、物語全体を見ると何となく「冒険もの」的で健全。
この辺は、演じている松本保典さん(ルキシュ)や吉田鋼太郎さん(カウス・レーゼン)の声があくまでヒロイックで湿っぽくないからなのか。
あるいは演出家の違い(「マージナル」…小木哲郎さん、「イズァローン伝説」…川口泰典さん)なのかもしれませんね。

さて、本作品、序盤はふたりの王子を中心にした王宮劇または陰謀ものと思わせる展開で、ティオキアサイドとルキシュサイドに分かれて事態が進展していきます。
しかし、中盤から「魔」に取りつかれたティオキア側を中心に、ファンタジー要素が強まっていき、物語は大きく変容していきます。
それもそのはず。
本作品の原作は文庫版で8巻のボリュームで、ストーリーはたっぷり用意されていました。
このラジオドラマも1回120分とNHK-FMの単発ドラマではかなり長めの作品で、通常の青春アドベンチャー(15分×10回)に劣らないボリュームではあるのですが、いかんせん枠が窮屈すぎる。
脚色は青春アドベンチャーの「オズ」に続いて2作目の担当となる前田悠衣さんなのですが、正直言って、印象的なエピソードとエピソードを駆け足でつないでいっているだけで、ストーリーを追うのにいっぱいいっぱいのように感じました。
ラジオドラマ化、特に漫画のラジオドラマ化は原作の要素の取捨選択が特に重要だと思います。
悲しみの時計少女」、「わたしは真悟」など多くの出演歴のある前田さんが脚色で本領を発揮されるのは、この次の「霧隠れ雲隠れ」以降になります。

さて、出演者に話を映しますと、まず主役のティオキア役を元宝塚女優の「ありす未来」さんが演じています。
演出の川口泰典さんは、宝塚出身の女優さんを多用した方で、本作にも出演されている大輝ゆうさん、前田悠衣さん、仁科有理さんなどは他の作品にもたくさん出演されているのですが、「ありす未来」さんは他の作品ではお見かけしないのがちょっと不思議です。
一方の男性陣も、上記の松本保典さん(「あの夜が知っている」)、吉田綱太郎さん(「ブラジルから来た少年」)のほかに、海津義孝さん(「ジュラシック・パーク」)など、他の傑作川口作品で主演されてきた方が揃い踏み。
…なのにこの作品が微妙に盛り上がりに欠けるのはなぜでしょう?
アニメ「アルスラーン戦記」(1991年~1995年版。荒川弘さんの絵はどうもなじめない…)の音楽は良くはまっているんですけどね。
そういえば、本作品と同じような日本人原作の異世界ファンタジー「ダーク・ウィザード~蘇りし闇の魔導士~」もイマイチでした。
やはり川口さんはサスペンスものや、エンタメ色の強いSFが一番。
大変失礼ながら、異世界ファンタジー作品の採用は、少しダミーヘッド(バイノーラル録音)に合う作品ということに拘りすぎていたようにも感じます。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。こちらをご覧ください。傑作がたくさんありますよ。



★本文内のリンクについて★
本ブログは、紹介したラジオドラマからスタートして、関連している作品、していない作品、原作などの様々な作品に興味を持っていただきたいと思い、本文の随所にリンクを設置しています。
特に外部リンクと明示してあるものと、アマゾンの画像以外は原則として本ブログ内へのリンクに限定しておりますので、安心してリンク先の記事をお楽しみください。
なお、アマゾンの画像リンクについてはこちらのご注意事項もご参照ください。


□スポンサーリンク□

テーマ:ラジオドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

笑う20世紀パート3 作:藤井青銅(青春アドベンチャー)

作品:笑う20世紀 パート3
番組:青春アドベンチャー
格付:C+
分類:コメディ
初出:1996年10月21日~11月1日(全10回)
作 :藤井青銅
演出:松本順
主演:信太昌之(その他下表のとおり)

全部で6作品制作された藤井青銅さん脚本の短編オリジナルラジオドラマシリーズ「笑う」シリーズの第3弾が、この「笑う20世紀 パート3」です。
この「笑う」シリーズとその後継作品であった「踊る」シリーズは、いわゆる「干支シリーズ」と並んで、青春アドベンチャーにおける藤井青銅さんの代表的な作品です。
しかし、時事ネタを扱っていたことから全く再放送されなかった「干支シリーズ」と違って、「笑う」シリーズは頻繁に再放送されました。

さて、本作品も前作前々作と同様に、少しシニカルなコメディ作品になっていますが、毎回、嘲笑に近いシニカルな笑い声で終わっていた前作までと異なり、明るいテーマ曲で締める構成になっており、全体的に陽気で明るい雰囲気の作品になっています。
これは演出が前作までの川口泰典さんから、松本順(すなお)さんに変わったことが大きく影響しているのだと思います。
そして演出の交代は出演者にも影響を及ぼしています。
前作までは、前田悠衣さんや、山西惇さん、海津義孝さんといった、いかにも川口さん演出作品らしい方々でしたが、この「パート3」の出演者は、中村元則さん、伊沢勉さん、信太昌之さん、横田砂選さん、島津冴子さん、小椋あずきさん、島田沙羅さん、峯尾進さんの8人であり、前作までの出演者は一掃されています。

それでは、各回の内容をご紹介いたしましょう。
いつもどおり、各話の主演俳優、格付け、粗筋、一言を表にしてあります。

話数 タイトル 主演 格付け 粗筋 一言
1 抗菌の乱 伊沢勉 C+ 抗菌グッズで部下の好評を得た部長。更なる若手のやる気醸成のために取った策とは。 徐々にエスカレートする藤井さんお得意のパターン。タイトルは黄巾の乱のパロディ。
2 観光ごっこ 信太昌之 B 南国・ハニャモネラ共和国の新婚旅行にやって来た二人がトラブルに巻き込まれるが。 あまり笑えないが、ひょっとしたら何らかの真実を鋭く指摘しているのかも?知れない。
3 OEM 信太昌之 B- ライバル会社のクラクションを製造することになった。釈然としない社員は… わかっていても過剰だと笑ってしまう。ところで確かにOEMは何となく釈然としない。
4 格安物件 信太昌之 B- 格安のマンションを手に入れた男。しかし夜になると何かが聞こえてきた… 「住専」などの言葉に時代を感じる。ただし社会批判色はない単純なコメディ
5 マルチメディア万歳 伊沢勉 B- パソコンにもFAXにもついて行けない。そんな中年サラリーマンが立ち上がった? 会員が増えた時点でオチが読めるなあ。
6 激安の秘密 中村元則 B なぜか終わらない携帯電話の安売り。その背後には、ある国家的な陰謀があるのだった。 本作から20年経つのにまだ安売り競争は続いている。1人1台には収まらなかったが。
7 カメレオン男 信太昌之 C+ その男の特徴はこれといった特徴がないこと。しかしそれは特別な能力でもあったのだ。 面白い設定だけどオチがイマイチ。
8 天秤の男 伊沢勉 B- 幸不幸が交互に起こる男。大きな商談を前に、確実に不幸になっておきたいところだが。 予想どおりのオチだが意外と楽しめた。信仰はなくてもジンクスは気にしちゃうよね。
9 最終面接 伊沢勉 B- 科学的に善人・悪人を判断できる機械を作った会社。早速、新人採用に活用したのだが… 予想どおりの展開で、びっくりするようなオチもなくおわってしまった。
10 記念日ころがし 中村元則 C そうだ!耳かき専門メーカーのわが社も記念日を造って売り上げアップを図ろう! これもあまりオチが印象に残らない。アンダルシアの下りは面白かったが。

「笑う20世紀」第1弾では女性が主演する作品もあったのですが、第2弾はすべて男性が主演。
この第3弾も女性が主役並みに活躍するのは、第9話「最終面接」の島津冴子さん(「絶句」、「家族ホテル」、「カムイの剣」など)くらいです。
脚本家の藤井青銅さんが男性なので当たり前といえば当たり前ですが、「不思議屋」シリーズ「ライフ」シリーズのように女性を含めた多数の脚本家が競作するアンソロジー作品との違いが、こういうところにも表れていると思います。

★本文内のリンクについて★
本ブログは、紹介したラジオドラマからスタートして、関連している作品、していない作品、原作などの様々な作品に興味を持っていただきたいと思い、本文の随所にリンクを設置しています。
特に外部リンクと明示してあるものと、アマゾンの画像以外は原則として本ブログ内へのリンクに限定しておりますので、安心してリンク先の記事をお楽しみください。
なお、アマゾンの画像リンクについてはこちらのご注意事項もご参照ください。


□スポンサーリンク□

テーマ:ラジオドラマ - ジャンル:テレビ・ラジオ

次のページ

FC2Ad