青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

しゃばけ 原作:畠中恵(青春アドベンチャー)

作品:しゃばけ
番組:青春アドベンチャー
格付:AA+
分類:伝奇
初出:2002年4月15日~4月26日(全回)
原作:畠中恵
脚色:佐藤ひろみ
演出:松本順
主演:金子貴俊

廻船問屋・長崎屋の若旦那・一太郎(いちたろう)は数えで17歳。
普通の人の目には見えない「妖」(あやかし)を見ることが出来る不思議な体質の持ち主だ。
一太郎は、なかなかの美男子だが、並外れてひ弱。
長崎屋が同時に経営している薬種問屋(薬屋)を任されてはいるものの、彼を溺愛する両親や手代の佐助・仁吉たちに甘やかされて育った。
生来、気が優しい一太郎は、周りの好意をありがたく受け止めているが、あまりに甘やかされることに少しだけ不満もある。
そんなある日、帰りが遅くなった一太郎は、道ばたで不審な人物に切りつけられる。
事件に人ならぬ物の蔭を感じ取る一太郎。
不審に思った彼は、仲の良い「妖」たちと共に事件の真相を探り始めるのだが、やがてそれは多くの薬種問屋を巻き込む事件に発展していくのだった。

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本作品「しゃばけ」は畠中恵さんの代表作であり、第13回の日本ファンタジーノベル大賞を受賞した小説を原作とするラジオドラマです。
この小説「しゃばけ」は大好評だったようで、その後シリーズ化され、2017年5月現在、合計13作品が刊行されています。
第1弾の「しゃばけ」及び第5弾の「うそうそ」は、2007年と2008年にTVドラマ化もされておりますので、それでご存知の方も多いかと思います。
青春アドベンチャーでは2002年にこの「しゃばけ」をラジオドラマ化したほか、2004年には、第2弾の「ぬしさまへ」(短編集)を「しゃばけ2」としてラジオドラマ化しました。
ちなみにTVドラマ版ではNEWSの手越祐也さん、青春アドベンチャー版では金子貴俊さんという、「世界の果てまでイッテQ」出演者がそれぞれ主人公の一太郎を演じています。
一太郎の「なかなかの美男子だが、並外れてひ弱」のうち、「美男子」という部分を重視したのがTVドラマ版のキャスティング、「ひ弱」という部分を暗くならないように少し剽軽に表現することを重視したのが青春アドベンチャー版のキャスティングである様に感じます。

さて、前置きはこのくらいにして、本作品の内容紹介に移ります。
本作品の舞台は江戸時代の江戸。
実は江戸時代の江戸を舞台にした作品は青春アドベンチャーでは稀少で、本作品及び続編の「しゃばけ2」の後は、2006年の「風になった男」(原作「始祖鳥記」)、2007年の「尾張春風伝」、2012年の「蜩ノ記」、2014年の「鷲の歌」など、江戸時代を描いた作品ではあるものの場所は江戸以外を主な舞台とする作品が続きました。
江戸を主な舞台にした作品は本シリーズのほかは、2016年の「エド魔女奇譚」・「白狐魔記 元禄の雪」くらいです。
不思議にも本作品を含めて江戸を主舞台にした3作品はすべて「歴史・時代もの」ではなく、超常要素アリの「伝奇もの」ばかり。
逆にベタベタの捕物帖なんかがあっても良い気もします。

話しを本作品に戻しますと、本作品のタイトル「しゃばけ」を漢字に直すと「娑婆気」。
何やらおどろおどろしい漢字ですが、栄誉や損得、快楽など俗世間における様々な欲望にとらわれる心のことだそうです。
作品中でも「人はみんな、娑婆気を抱えている」などと使われたりします。
本作品は人の血に狂った妖怪を退治する物語ではあるのですが、その背後にあるのは妖怪の邪悪さというより、しゃばけに囚われた人間の業。
江戸時代という身分制度が厳しい時代で、ままならぬ人生を送る人の情念こそが事件の真の原因なのでしょう。
…などと堅苦しく書きましたが、この作品の魅力はそんなところにありません。
一太郎のまわりの妖怪たちはどこか楽し気で魅力がいっぱい。
あくまで忠実で誠実な佐助(犬神)や仁吉(白沢)。
にぎやかでかわいい鳴家(やなり)たち。
どこか斜に構えた「屏風のぞき」。
それぞれが個性的で、一太郎が切り盛りする「薬種問屋・長崎屋」はまさに「不思議屋薬品店」状態(笑)。
青春アドベンチャーでは「封神演義」や「ミヨリの森」、「世界でたったひとりの子」など、人ならざる存在にアニメ中心の専業声優さんをあてることによってうまく雰囲気を出している作品も多いのですが、本作品では大竹周作さん、中村まことさん、頭師孝雄さん、江良潤さん、柳澤慎一さんといった俳優さんたちがなかなか良い雰囲気で演じられています。
また、子鬼の鳴家(やなり)達は、下山彩那さん、鈴木つばささん、石川由依さん、鈴木里彩さん、小川李子さんの5人で演じられているのですが、今思えば本作品がのちに「風神秘抄」(2006年)、「砂漠の歌姫」(2011年)、「月蝕島の魔物」(2012年)などで主役・ヒロインを演じられることになる石川由依さん(当時12歳で劇団ひまわり所属の子役)の青春アドベンチャーデビュー作だったのかもしれません。
そして、金子さんが演じる一太郎が、軽やかにあくまで飄々と彼らに付き合っていることも、独特の楽し気な世界観を構築するのに役立っていると思います。
TVドラマではこの妖怪たちはSFX(?)を使って描かれていたわけですが、本ラジオドラマ版ではわずかなBGMとSE、そしてせりふ回しだけで十分魅力的に描かれており、中途半端なSFXより人間の想像力の方がよほど効果的と感じました。
せりふといえば、本作品は、先年亡くなられた名声優・永井一郎さん(青春アドベンチャーでは「不思議屋」シリーズや「夏の魔術」でおなじみ)がナレーションを担当されているのも魅力です。
金子貴俊さんをはじめとする出演者、SE、BGMに、この永井さんのナレーションが加わり、オーディオドラマとして完成度の高いパッケージができていると感じます。

また、ストーリー面でも「家守奇譚」のような不思議な「場」の雰囲気を楽しむだけの作品ではなく、(あくまで超常現象が存在することを前提としたものではありますが)謎解き的な面白さもあり、「女王の百年密室」や「悲しみの時計少女」に似た楽しみ方もできる作品となっています。
なかなかの良作だと思います。


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タイムライダーズ 原作:アレックス・スカロウ(青春アドベンチャー)

作品:タイムライダーズ
番組:青春アドベンチャー
格付:AA+
分類:タイムスリップ
初出:2017年4月3日~4月21日(全15回)
原作:アレックス・スカロウ
脚色:小松與志子
演出:真銅健嗣
主演:吉永拓斗

1912年、沈みゆくタイタニック号Eデッキで老人の声が響き渡る。
「君の命は残り4分。答えろ、生き延びたいか。さあリアム、決断の時だ。私に付いてくるならこの手を掴め。」
2011年、ボストンから西海岸へ向かう旅客機の中で老人はマディに語り掛ける。
「数分後、この旅客機の乗客全員が死ぬ。だが、君だけ生き延びることを選択できる。さあ手を握り給え、早く。」

沈みゆく豪華客船から、墜落する旅客機から、ムンバイの業火の中から、メフィストフェレスの手にひかれて3人の若者が集められた。
彼らの新しい人生の舞台として用意されたのは2001年9月10日。
翌日に起きる「あの事件」があまりに人々の記憶に鮮烈に残ったために、逆に人々の記憶から抜け落ちてしまった、その前日。

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本ラジオドラマ「タイムライダーズ」は、イギリスの作家アレックス・スカロウの少年少女向けのタイムトラベルファンタジー?を原作とする作品です。
原作小説は、日本語版だけでも「タイムライダーズ」、「タイムライダーズ 紀元前6500万年からの逆襲」、「タイムライダーズ 失われた暗号」の3作品が発表されていますが、母国イギリスでは合計9作品(完結)の長編シリーズなのだそうです。
昨年2016年末に「元禄の雪」で藤井靖さんの「白狐魔記」が完結したのですが、それに代わる真銅健嗣さんの新シリーズの始まり…だったらいいな。

さて、本作品は典型的なタイムトラベルSF、それも主人公たちがいわゆる「タイムパトロール」役になる古典的なSFです。
この種の作品は星の数ほどあるわけで、本作品の2作品前に制作された「つばき、時跳び」もタイムトラベルものでした
しかし、ごく狭い世界を舞台とした「つばき、時跳び」とは異なり、本作品は、有名な事件が再現されるわくわく感、歴史が改変され世界が変わってしまう緊張感、それに時間移動を利用したトリックなどを主体とした王道のタイムトラベルものです。
ただ、シリーズものの第1作という位置づけから、序盤を「タイムライダーズ」結成までのエピソードに割かざるを得ず、本編の冒険は中盤以降となります。
そのためか、冒険の舞台となるのは第2次世界大戦末期と比較的身近であり、スケール感はあまりありません。
ただ逆に身近であるが故の緊張感もあり、タイムパトロールものらしい緊張感にあふれた良作になっています。

演出面でも、小松與志子さんのナレーションが全くない脚本を、セリフと効果音だけでうまく表現していることが印象的です。
セリフについて出色なのは、「タイムライダーズ」を招集する謎の男、冒頭の紹介では「メフィストフェレス」と比ゆ的に表現しましたが、特に序盤はどうにも胡散臭いフォスターを演じる山崎たくみさんの声。
作品中でフォスターの容姿を説明するナレーションは一切ない(フォスター自身が「ただの老人だ」いうのが数少ないヒントでしょうか)のですが、この声だけで十分怪しい雰囲気が伝わってしまいます。
ナレーションが全くない以上、声質やしゃべり方でキャラクターを表現することは必須。
はっきりいってかなり過剰な演技ですが、この作品にはこれくらいでちょうどいいと思います。
それにしても山崎さんの声を聴いていてふと思ってしまったのは、「(若くして亡くなられた)塩沢兼人さん似ているなあ」ということ。
常に似ているわけではないのですが、時々、「すごく気取った声を出しているときの塩沢さん」とよく似た雰囲気の声になります。
調べてみると、山崎たくみさんは塩沢さんの死後、その持ち役の多くを引き継がれた方とか。
NHK-FMはアニメ畑の専業声優さんをあまり使わないのですが、塩沢さんは1980年代から1990年代までずいぶんとNHK-FMに重用されていました。
妖精作戦」、「サラマンダー殲滅」、「マージナル」、「オルガニスト」などなど懐かしい作品が目白押しです。
山崎たくみさんのお声を聴いていて何だかとても懐かしい気分になってしまいました…
懐かしいといえば、妙に脱力系のエンディングテーマもちょっと懐かしいように感じました。
アドベンチャーロード時代にはこういったちょっと軽い感じのエンディングテーマも多かったように記憶します。
本編とはちょっと雰囲気が違う曲を掛けることによってちょっとしたクールダウンの効果があったような気がしますね。
特に最終話は、最後の場面から出演者紹介にうまく音楽がつながっておりなかなか印象的でした。
本作品の音楽を担当している山本清香さんがそこまで意識していたかはわかりませんが。

さて、出演者の話に戻りますと、その他の出演者さんも、礼儀正しく責任感の強い元客室係リアム・オコナー少年役の吉永拓斗さん(青春アドベンチャー初主演!)、世慣れたプログラマー(趣味はハッキング)のマディ・ガーター役の占部房子さん(「泥の子と狭い家の物語」、「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」など)などキャラクターの色分けが見事。
特にまっすぐな性格で仲間思いでもあるリアムが主人公であることが、吉永さんの素直な声と相まって、この作品をとても気持ちの良いものにしていると思います。
強いて言えば、マディ役の占部さんと、インド人少女(2026年出身)サリーナ・ビクラムを演じる磯部莉菜子さんの声としゃべり方にもっとはっきりとした差を付けてよかったような気はします。
ただ、残念ながらこの「タイムライダーズ」の3人の中では、「実行役」で出番の多いリアムと、他のふたりの間にはかなりの差がありました。
キャラ付がはっきりしてくるのは第2作目以降なのかも知れないと思うと、次作を期待してしまうところです。
そして、マディとサリーナがいまひとつ印象が強くないのと対照的に、本作品で存在感が強いのは様々なオジサマ方。
先ほど述べたフォスターがまずそうなのですが、他にも、「ベルリンの秋」のシュタイナーや「封神演義」の聞仲が懐かしい大友龍三郎さんが演じた「支援ロボット・ボブ」が準主役といってもよい活躍だったことは「肯定」せざるえをえないところでしょう(笑)。
そのほか、これもおじさんである敵役コンビ、石橋徹郎さん(「晴れたらいいね」の佐治軍医、「獅子の城塞」の次郎左)が演じたクレイマー博士と、信太昌之さんが演じたカールのドラマも本作品のもうひとつの聴き所といってもよいと思います。
そういえば、実在の人物であるアドルフ・ヒットラーを演じた酒向芳さんも、「闇の守り人」のジグロ役で印象的な方でした。
この方面ではずいぶんと豪華な配役です。

それにしても全15話を聴き終わって残った最大の謎は、そもそも「タイムライダーズ」とは何なのかということ。
作中ではスポンサーや設立経緯などは全く明かされませんでした。
役割の重要さから言って、国家規模、あるいはそれ以上(全人類規模)のバックはあってもおかしくない割には小規模な?組織。
この辺は第2作目を聴けば明かされるのでしょうか。
やはりこれは2作目を期待せざるを得ないところです。


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