青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

新竹取物語 1000年女王 原作:松本零士(FMシアター/特集スぺースアドベンチャー)

作品:新竹取物語 1000年女王
番組:FMシアター(特集スペースアドベンチャー)
格付:A-
分類:SF(宇宙)
初出:1992年1月4日~1月5日(全2回)
原作:松本零士
脚色:じんのひろあき
演出:川口泰典
主演:こだま愛

惑星ラーメタルは1000年に一度、地球に近づく遊星である。
しかし、1999年の接近はいつもと違った。
今回、ラーメタルは地球に近づきすぎる。
地球文明が滅ぶような大災害が起こるかもしれない。
それに気が付いてしまったのは、筑波山天文台の雨森教授、教授の助手の雪野弥生(ゆきの・やよい)、衛星天体観測所で観察を続けてきた夜森(やもり)、そして雨森教授の孫の少年・雨森始(あまもり・はじめ)。
4人はそれぞれの立場、考えでこの人類の危機に立ち向かうことになる。

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「銀河鉄道999」で有名な松本零士さん原作の同名の漫画作品「新竹取物語 1000年女王」を原作とするラジオドラマです。
さて、松本零士さんといえば、「宇宙戦艦ヤマト」と「銀河鉄道999」。
この2作品のアニメで、その名が世に知らしめられたわけですが、ヒットに気を良くした関係者が3匹目のドジョウとして選んだのが、この「新竹取物語 1000年女王」。
まさに「銀河鉄道999」の後番組として1981年4月にTVアニメ化された……らしいのですが、全く私の記憶にありません。
おかしいな、いくら幼い頃と言っても「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」は鮮明に記憶に残っているのに…何でその後番組の記憶が全くないのだろう?
丸1年間も放送されているうえに、同時期に産経新聞で漫画連載、ニッポン放送でラジオドラマ化、そして劇場映画公開とさかんにメディアミックスされていたのに…
ひょっとして、松本零士さんにとって、これはいわゆる「黒歴史」というやつなのか?
まっまあ、良しとしましょう。

さて、NHK-FMと松本零士さんの縁は意外と古く、「ふたりの部屋」の最初の作品として、1978年に[銀河鉄道999」が放送されています(市村正親さん主演)。
また、その前年の1977年には、あべ静江さんによる朗読劇ですが「宇宙戦艦ヤマト」も取り上げられています。
「宇宙戦艦ヤマト」のテレビ放送が1974年、劇場版の上映が1977年ですのでNHKも、まさに流行に乗って放送したといってよいと思います。
それでは、この「新竹取物語 1000年女王」も上記のメディアミックスの一環として放送されたのでしょうか?
それが全然違うようなのです。
本作品NHK-FM版「1000年女王」が放送されたのは、松本零士ブームが去って久しい1992年なのです。
1000年女王プロジェクトが終わって10年以上経って突如、再ラジオドラマ化されたlことになります。
本作品をチョイスしたのはおそらく、当時ダミーヘッド(バイノーラル録音)のラジオドラマを多数制作していた演出の川口泰典さんでしょう。
2015年に放送された「今日は一日ラジオドラマ三昧」に出演された際に「いつもダミーヘッドにある作品を探していた」と語っていた川口さん。
本作品もその観点から発掘したものと思われます。
なお、同時期に「特集スペースアドベンチャー」と銘打たれて放送された作品は、本作品のほかに梶尾真治さん原作の「サラマンダー殲滅」があります。
ただし「サラマンダー殲滅」は帯ドラマであった「サウンド夢工房」(1回15分)の枠を使って放送されたのに対して、本作品は2夜連続で60分という長めの枠で制作されました。

さて、この「新竹取物語 1000年女王」は、原作漫画にして全5巻、TVアニメで42話の作品です。
しかし、このラジオドラマは1時間×2回。
とても全体が入り切る分量ではありません。
そのため、原作の取捨選択に巧みな脚本家じんのひろあきさん(例:「北壁の死闘」)の手によりばっさりと枝葉が削られているのですが、どうもそれだけではないようです。
原作漫画もTVアニメも見たことはないので定かではないのですが、インターネットで集めた情報によると、このNHK-FM版には、原作等にあった「1000年女王の母の存在とラーメタル人の地球侵攻」という要素が全くなかったり、「1000年盗賊の首領」の翔太が全く違っていたりするようです。
ここまでいくとほとんど別作品?
松本零士「原案」といってもいいくらいの改編だと思います。
その結果として、この「1000年女王」が持つ松本零士作品全体における重要な位置づけ、すなわち「銀河鉄道999」や「クイーン・エメラルダス」、さらには「宇宙海賊キャプテンハーロック」とのつながりはほとんどなくなり、「松本零士サーガ」の一部とは言えない作品になってしまっています。
ただ、それが悪いことばかりかというとそうとも言えないと思います。
遊星ラーメタルとラーメタル人の存在は、あくまで作品世界に深みを与える味付けとして使われ、地球を襲う未曽有の大災害にどのように立ち向かうかという洋画「アルマゲドン」的なテーマがメインとなっています。
肝心のダミーヘッドがどれだけ効果的だったかは今一つ分かりませんが、2時間もののSF作品としてはこれで良かったと思います。
実際、視聴後感は悪くない作品です。
まあ、そのために「1000年盗賊」が何だったのかはいまひとつわからなくなってしまいましきたが(いえ「人間の生きようとする意志そのもの」というのは分かるのですが、結成の経緯とかなんでその生になったとか説明不足にもほどがあります)。

出演者は、主人公?も雪野弥生を演じたのが「こだま愛」さん。
そしてもう一人の主人公の始少年を演じたのは「あづみれいか」さん。
川口泰典さん演出作品らしく、宝塚出身の女優さんのペアです。
このお二人に続くメインの役である夜森を演じたのは俳優の松重豊さん。
「孤独のグルメ」でブレーク後、最近はCMでも引っ張りだこの松重さんですが、1990年代の青春アドベンチャーで多くの海外SF原作作品(「盗まれた街」、「猫のゆりかご」、「時間泥棒」など)に主演されていました。

【じんのひろあき脚本の他の作品】
スピーディーな展開、的を絞った見せ場。
青春アドベンチャー初期の名脚色家・じんのひろあきさんの担当作品一覧はこちらです。

【川口泰典演出の他の作品】
紹介作品数が多いため、専用の記事を設けています。
こちらをご覧ください。
傑作がたくさんありますよ。





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渇きの海 原作:アーサー・C・クラーク(FMアドベンチャー)

作品:渇きの海
番組:FMアドベンチャー
格付:AA+
分類:SF(宇宙)
初出:1984年9月24日~10月12日(全15回)
原作:アーサー・C・クラーク
脚色:瀧沢ふじお
演出:花房実
主演:中尾隆聖

極めて粒子の細かい砂が堆積し、あたかも水のように流れている“渇きの海”。
そこは月面を代表する観光地だ。
セレーネ号は、この危険だが極めて安定した“渇きの海”で運行されている遊覧船である。
乗客22人を乗せたその日の遊覧も、月面を熟知したパット船長の操縦のもと、何事もなく進んでいた。
そのためパット船長も乗客達も全く想像していなかった。
その日、かつて“渇きの海”で観測されたことのない“海面”の陥没が発生することを。
そして、奇跡的な確率でセレーネ号がその事故に遭遇してしまうことを。

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本作品「渇きの海」は、1980年代の中盤にNHK-FMで1年間だけ放送されてい番組「FMアドベンチャー」で放送されたラジオドラマです。
当時は、月曜日から金曜日まで10分ずつの枠で放送されていた「FMアドベンチャー」と、土曜日に約1時間弱の枠で放送されていた「FMシアター」の2番組が、丁度、対になるタイトルで放送されていました。
前者はその後、「アドベンチャーロード」→「サウンド夢工房」→「青春アドベンチャー」とタイトルが変わり(ついでの放送枠も15分に変わり)、今に至っています。
正直、今でも「青春アドベンチャー」というやや気恥ずかい番組名ではなく、「FMアドベンチャー」という番組名で良いのではないか、とも思ったりします。

さて、本作品は「幼年期の終わり」や「2001年宇宙の旅」で有名なアーサー・C・クラーク、すなわちSF界のビッグスリーのひとりと呼ばれた超大物小説家の小説を原作とするラジオドラマです。
ちなみにビッグスリーの残りの2者は、アイザック・アシモフとロバート・A・ハインライン。
ハインラインは随分後に代表作の「夏への扉」が青春アドベンチャー化されていますね。
3人の中では、クラークが最も科学考証に重きを置いたハードSF指向であり、本作品「渇きの海」もハードSFに分類される作品です。
具体的な内容としては、月の砂漠で起きた事故をテーマとする事故パニックSFともいうべき作品です。
青春アドベンチャー系列で放送された似た傾向の作品としては、ハードSFという面では「太陽の簒奪者」、パニックものという面では「スフィア」や「ジュラシック・パーク」が、その両者を兼ねるものとしては「小惑星2162DSの謎」があります。
本作品は、これらの中でも最良の作品の中のひとつと言っても過言ではないかと思います。

それでは具体的に本作品の内容を紹介します。
本作品で発生する事故は単純明快。
地中のガスが抜けたことによる陥没にたまたま遭遇したセレーネ号が“水深”15mの地点まで潜ってしまうのです。
全く身動きが出来ず遭難場所すら知らせることができなくなってしまったセレーネ号。
内部の乗客乗員24名と、外部の関係者による必死の脱出(救出)作戦が始まります。
温度上昇、酸素不足など危機が次々と発生しますが、内外の関係者の必死の努力で希望をつないでいく様は、パニックモノの典型的な展開と言えるでしょう。
そして、主人公であるパット船長にとって幸運だったのは、乗客の中に老人ながらとても頼りになる人物がいたこと。
ハンスティーン提督はかつて冥王星探査を指揮した経験のある老練な人物で、宇宙船乗りらしい肝の太さとユーモアのセンスを併せ持つ傑物です。
このハンスティーン提督は、ムーミンパパ役でおなじみだった高木均さん(2004年没)が演じています。
高木さんと言えば独特な抑揚のある声が印象的で、NHK-FMのラジオドラマでも「封神演義」、「小惑星美術館」、「マージナル」などでとても幻想的な(気味の悪い?)役を演じていましたが、本作品のハンスティーン提督はとても理知的で穏やか。
こういう役も意外と高木さんの声にあっていますね。
また、もうひとりの“お助け老人”が八木光生さんが演じるマッケンジー博士。
科学的な知見を生かして危機を事前に察知したりもしますが、基本的にはひょうひょうとした味わい深いじいさんです。
八木さんは東京放送劇団(当時のNHKの専属劇団)の方でしたので、この時期の多くの作品に出演されていますが、比較的アクの強い役が多い中、この作品ではとても楽しそうに演技をしているのが印象的です。
楽しそうと言えば、本作品は役名と出演者名を出演者さんご自身が言う形式なのですが、12話の出演者紹介の際には、八木さんは同じ東京放送劇団の関根信昭さんと一緒に、その回の内容を反映して、ゴホゴホ言いながら(なぜゴホゴホかはネタバレ防止のため秘密です)自己紹介したりしてなかなか楽しい趣向です。
その他、スクープを狙って実況中継を続ける大木民夫さん演じるスペンサー記者や、なぜか声だけで宇宙的なイメージが喚起されてしまう矢島正明さんのナレーション(なぜってカーク船長だからに決まってますが。そういえば「オペレーション太陽」も矢島さんのナレーションでしたね)なども印象的です。
そのため、主人公のパット船長やヒロインのスーが相対的に印象が薄いのですが、調べてみると、この二人を演じている中尾隆聖さんと鵜飼るみ子さんだって、「アンパンマン」のばいきんまんと、「機動戦士ガンダム」のフラウ・ボゥな訳で、結構、凝った配役だったりもします。

そうそう、上記のスペンサー記者の実況中継ですが、これもナレーションの補助的な役割を果たしています。
また、序盤に作中でパンフレットを読むシーンがあるのですが、これも上手くナレーション的に利用されています。
SFのラジオドラマは、どうしても状況説明的なナレーションが多くなりがちで、例えば「小惑星2162DSの謎」などでは主人公の台詞の中で「例え」を連発させることで上手く状況説明をしていました。
本作品の脚色は滝沢藤男さんという方ですが、SFのラジオドラマではこういった脚色上の工夫が必要不可欠だと思います。




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