青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

青春離婚 原作:紅玉いづき(青春アドベンチャー)

作品:青春離婚
番組:青春アドベンチャー
格付:AA
分類:恋愛
初出:2017年3月27日~3月31日(全5回)
原作:紅玉いづき
脚色:佐藤ひろみ
演出:大久保篤
主演:大渕野乃花

中学時代、わたしの裏での呼び名は「ケイレン」だった。
ストレス性の顔面痙攣のせいだ。
そのせいでずいぶんと嫌な思いをした。
だから高校は、わざわざ家から遠い、この八木商業高校を選んだのだ。
それなのに。
登校初日、アイウエオ順に並んだ机での自己紹介。
わたし、佐古野郁美(さこの・いくみ)のすぐ後に自己紹介した彼はこういったのだ。
「佐古野、灯馬(とうま)です」
先生が訪ねる。
「なんだ? 佐古野郁美と同じ苗字だな。親戚か?」
否定する灯馬さんにさらに先生は言った。
「そうか。せっかくだから仲良くしろよ!夫婦みたいなんだからな」
一斉に笑うクラスメイト。
最悪。
やっと「ケイレン」から逃れられたと思ったら、今度は「夫婦」だなんて…

――――――――――――――――――――――――――

本ラジオドラマ「青春離婚」の原作は紅玉いづきさんによる小説で、初出は「星海社カレンダー小説2012(下)」です。
この2012年という年は本作品にとって一定の意味があるのですが、まずはそれは置いておいて、話を先に進めますと、その後、この「青春離婚」は書き下ろしの2編、「非公式恋愛」と「家族レシピ」とともに2014年に単行本にまとめられて出版されています。
本ラジオドラマはこの単行本に収録された3篇のうち「青春離婚」の部分をラジオドラマ化した…ように(少なくとも公式HPを見ていると)思えるのですが…
うーん、書きたいですけど、これ以上書くとネタバレになっちゃうので、ここは我慢することにします。
まあここまで書いた段階で大体想像できちゃうと思うのですが、****だけではなく*****も…、しかもラストシーンのあのセリフは実は…
イカーン!
紅玉いづきさんご自身がツイッターで以下のように書いています。



やはり、これは原作を読んだ方へのお楽しみとしておきましょう。

それにしても星海社の本が原作になったのってひょっとして青春アドベンチャー初でしょうか。
星海社は講談社の100%出資子会社ですが、WEBサイトを中心とした出版を展開している会社で、作品内容的にも本の装丁的にもかなりライトノベル的なつくりをしている出版社です。
シナリオライター(「空の境界」の奈須きのこさん)やゲームデザイナー(「マージナル・オペレーション」の芝村裕吏さん)といった異色の経歴の作家を積極的採用することも特徴です。
端的に言うとかなり若者向けの出版社。
1980年代後半の「アドベンチャーロード」の時代以降、漫画やジュブナイル、ライトノベルからケータイ小説出身の作家の作品(「93番目のキミ」)まで積極的に手を伸ばし、若者に訴求する作品を提供してきたNHK-FMのエンターテイメントラインの面目躍如の作品選択でしょう。

若者に訴求するといえば、実は紅玉さんご自身が「青春アドベンチャー皆さん知ってるかな。わたしは結構ヘビーに聞いてた……。」と書いており、昔は青春アドベンチャーの熱心なリスナーだったようです。
最近、このような例が散見され、2013年の「世界の終りの魔法使い」の西島大介さんや「リテイク・シックスティーン」の豊島ミホさんが元リスナーであった旨を表明しています。
なかなかいい循環だと思います。

さて、ここまで内容に触れずに来てしまいましたが、本作品、全5回(15分×5回)の短編ですので、うえの冒頭部の粗筋より先は「もう聴いて!」としか言いようがない作品。
はい、甘酸っぱいです。
はい、正直、私、結構こういうの好きみたいです。
実は、上記の紅玉さんの「本を持っている方は、ラジオ聞いたらびっくりして嬉しくなるかも。」を見てしまったので慌てて先に原作を読ませていただいたのですが、先に読んでしまうと自分の中で作られたキャラクター像と声で表現されるキャラクター像の違いが気になってしまうのは致し方ないところ。
「ヤギをしゃべらせすぎ」とか「灯馬はもう少し平板に話してほしい」とか「逆に郁美は少しだけ快活すぎ」とか色々思ってしまったのですが、逆に言うとそういった微小な違いが気になるくらい、全体としては原作が良く再現されている。
この辺は、こういった恋愛ものには実績のある佐藤ひろみさん(「おいしいコーヒーのいれ方」とか「帝冠の恋」とか)の過不足ない脚色がすばらしいと思います。
ただ、残念だったのは後半がいくらなんでも急ぎ足だったこと。
原作で見ると前半3話分は約60ページであるに対して、後半2話分が原作では約80ページ。
後半、「僕」と「アリマユ」が積み重ねた時間が原作では80ページ分あったのに、ラジオドラマでは30分に圧縮されてしまっており、どうしても薄っぺらい感じがしてしまったのはとても残念です。
とはいえ2週間10話にするとすこし間の抜けた感じになったかもしれないので、これはこれでよかったのかもしれません。
いや待てよ、*****までやればちょうど10話分だったのかも…

さて、今回の記事では紅玉さんのツイッターを引用しているのですが、本作品はスマホのアプリやツイッターなど今日的なアイテムが登場する作品です。
冒頭に「2012年という年は本作品にとって一定の意味がある」と書いたのですが、実は本作品はスマホが普及し始めた時期限定のストーリーになっています。
本当に時代の進むのは早いもので、もうこのラジオドラマを放送している2017年時点ではスマホはすっかり普及してしまっており、この作品も同時代の作品という意味では、鮮度ギリギリといった感を受けます。
恐ろしいものですが、そういったアイテムの盛衰はともかく、この作品が扱っている、人生のある時期の切なさ、やるせなさは、いかなる時代でもかわらないものだと思います。
ところで原作ではtwitterと明示しているのですが、このラジオドラマでは一度もtwitterという言葉は出てきません。
個別の商品の宣伝にならないようにするためのNHK独自の措置なのですが、終盤、スターバックスも「コーヒーショップ」と言い換えていたのは、少し笑ってしまいました。

とにかく名古屋局制作とは思えない、素直で、いじらしい、この作品。
まあ、名古屋局とは言え、演出はおいコー4作品(「遠い背中」、「優しい秘密」、「聞きたい言葉」、「夢のあとさき」)を演出された大久保篤さんですので、むべなるかといったところでしょうか。
たまにはこのような素直な作品も良いものです。

最後に出演者について。
主役の佐古野郁美を演じたのは大渕野々花さん。
2000年生まれの現役女子高生!
NHKではEテレの「Rの法則」の第7期メンバーとして活躍中のようです。
また、「旦那さん」の佐古野灯馬を演じたのは渡辺佑太朗さん。
その他、アリマユ役(実はフルネームは「有馬真結」)の松本妃代さん、"僕"役の岡陽介さんが主要なキャラクター。
郁美だけではなく、最後にキメのセリフを言う灯馬、前半と後半をつなぐキーキャラクター・アリマユ、後半の主役といえる"僕"をあわせた4人がほぼ同じくらいの比重の主役グループといって良いと思います。

あと目立つのはヤギ役のおおみちとせさん。
ヤギをこれだけしゃべらせるのは結構冒険だったと思います。
原作では授業中に音が出るとまずいので、ヤギは一切、音を出さない設定だったと思います。
ラジオドラマなのでしゃべらないと進行が難しいという面があったのだとは思いますが、個人的には少しヤギのキャラクターが浮いているように感じられ、他の登場人物が読むような形でも良かったのではないかと思います。
ただ、最期の方の"僕"とヤギの声が重なる演出を聞いているとこれはこれでありにも感じました。


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上映時間108分。映画版「レインツリーの国」はFMシアターの限界を超えたか。そして「フェアリーゲーム」は?

【FMシアター・メディアミック情報①】レインツリーの国

2007年にNHK-FMの「FMシアター」でラジオドラマ化された「レインツリーの国」が映画化され、2015年11月21日から公開されました。
この記事をアップする2016年3月時点ですでに公開は終わっているようですが、2016年5月25日にDVD及びBlu-rayの発売が発売開始になることが、3月10日に発表されたようですので、このタイミングで紹介します。
なお、有川さんの作品について、NHK-FMでは「レインツリーの国」がFMシアターでラジオドラマ化されたほか、「三匹のおっさん」及び「旅猫リポート」が「青春アドベンチャー」でラジオドラマ化されています。

さて、ラジオドラマ版「レインツリーの国」については上記の作品紹介記事をご覧頂きたいのですが、FMシアターは約50分の枠の番組であり、単行本1冊を丸々ラジオドラマ化するにはやや尺が短すぎるのが実態です。
ラジオドラマ版の脚色は脚本家の山本雄史さんなのですが、それを踏まえてかなり省略したシナリオになっています。
省略といっても、全場面を薄く伸ばす形ではなく、前後を切り落とし、さらに中心となる部分の中でも主要なエピソードだけを中心に再構成したような脚色だった記憶があります。
これしかないということだったのかも知れませんが、全部のエピソードをやらなかったことにより、逆に原作のエッセンスが伝わる作品になっていると思います。
ちなみに映画は上映時間108分だそうで、ラジオドラマの倍の時間があります。
どのように再構成されているか興味が湧きますね。

また、興味が湧くと言えば、やはり気になるのは劇中劇?「フェアリーゲーム」の扱い。
「レインツリーの国」の記事や「妖精作戦シリーズ」の記事に詳しいのですが、「レインツリーの国」のストーリーでキーとなる架空のジュブナイル「フェアリーゲーム」は、明確に笹本祐一さんの小説「妖精作戦」をモデルとしています。
ラジオドラマ版でも「フェアリーゲーム」の1シーンが再現されていたのですが、「妖精作戦」とは似ても似つかないものになっていました。
映画でこの「フェアリーゲーム」がどうなったのか。
「妖精作戦」に近づいたのか、遠ざかったのか、はたまた華麗にスルーされてしまったのか。
この辺は、DVDにて確認したいと思います。

ラジオドラマ及び映画のそれぞれの出演者は以下のとおりです。

役名 ラジオドラマ 映画
向坂伸行(しん) 赤星マサノリ 玉森裕太
人見利香(ひとみ) 前田亜季 西内まりや
ミサコ 押谷かおり 森カンナ
その他 たかしまみき、福寿淳、一木美喜子、小山典子、中庭淳史、藤沢としや 阿部丈二、山崎樹範、矢島健一、麻生祐未、大杉漣、高畑淳子、片岡愛之助

主人公の「しん」を演じたのは、ラジオドラマ版では赤星マサノリさんで、映画では玉森裕太さん。
「しん」は関西人という設定なので、東京出身の玉森さんに対しては、共演者の片岡愛之助さん(大阪府堺市出身)が関西弁のアドバイスをしたそうです。(赤星さんはもともと関西の方。そもそもFMシアター版はNHK大阪局の制作)。
また、ヒロインの「ひとみ」を演じたのは、ラジオドラマ版では前田亜季さんで、映画では西内まりやさんです。
ラジオドラマ版ではこの「ひとみ」というハンドルの理由が作品全体のオチになっているのですが、映画の公開情報では最初からオープンですね。
また、このブログに関連した点では、映画版の主役の二人以外を演じた方々に、このブログですでに紹介した作品への出演歴のある方が多いことが一つの特徴です。
森カンナさんは「アグリーガール」(主演)に、阿部丈二さんは「旅猫リポート」、「髑髏城の花嫁」などに、麻生祐未さんは「赤と黒(第一部)」に、高畑淳子さんは「CF愚連隊」に出演されています。
ちなみに、まだ出演作品を紹介したことはないのですが、大杉漣さんも「すばらしき日々」・「ハローワーク」・「あなた」など、多くのFMシアター作品に出演されています。

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