青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

10人のシンデレラ パートⅢ 作:湯本香樹実(カフェテラスのふたり)

作品:10人のシンデレラ パートⅢ
番組:カフェテラスのふたり
格付:B
分類:幻想(その他)
初出:1988年2月29日~3月11日(全10回)
原案:山室静
作 :湯本香樹実
演出:角岡正美
主演:中尾幸世、銀粉蝶

「シンデレラ」といえば、今ではすっかりディズニーアニメがイメージされる訳ですが、もともとは世界中に類似の話が伝わっている民間伝承なのだそうです。
その範囲はとてつもなく広く深く、西欧のみならず中国にも類似の話があり、古くは紀元前1世紀にギリシアの歴史家ストラボンが記録したエジプトが舞台の話にまで遡る。
どの話も継母や義姉にいじめれたり、王子や王様に見初められたり、何かの道具を切っ掛けに幸せになったりといった基本的な構造は同じです。
そして、17世紀にフランスの文学者シャルル・ペローが、「ガラスの靴」や「かぼちゃの馬車」といった要素を取り入れたのものが、ディズニーのシンデレラの原型になりました。
この話に、これほど広汎な人々に受け入れられるに値する如何なる普遍的な価値があったのか、また、出所がひとつだとするとどのように伝播したのか、興味は尽きないところです。

さて、本作品「10人のシンデレラ」はそのような世界中に散らばったシンデレラのバリエーションをラジオドラマにした作品です。
本作品が放送された「カフェテラスのふたり」という番組は、本作品のようなリリカルな作品も多く、童話を題材にしているという点では「女たちの15の伝説/グリム幻想」も同様の作品でした。
本作品の元ネタは山室静さんの「世界のシンデレラ物語」(新潮選書)で、本作品ではこの中の8編を、脚本家の湯本香樹実さんが脚色(構成)しています。
湯本さんは非常に多くのNHK-FMのラジオドラマの脚色を担当されている方で、青春アドベンチャーの記念すべき第1作「14歳のエンゲージ」も湯本さんの脚色作品でした。

なお、「カフェテラスのふたり」では、合計3回、「10人のシンデレラ」という作品が放送されています。
1986年7月と1987年7月、そして1988年2月~3月。
それぞれの回がどのような内容だったのかは、いまひとつ判然としないのですが、ネットで調べてみると、1986年7月の作品が高樹沙耶さんと倉崎青児さんの出演、1987年7月の作品(「パートⅡ」と表記されている資料もある)が山下花奈さんの出演、1988年2~3月の作品(「完結編」や「総集編」と表記されている資料もある)が中尾幸世さんと銀粉蝶さんの出演とされていますので、出演者からすると今回紹介する作品は、最後の「完結編」だと思います。
ただし、作品中では「完結編」とは特に言っておらず、最終回で「パートⅢ」といっていますので、本ブログでもそのように表記しています。
何はともあれ、このパートⅢで紹介する「シンデレラ」は以下の全8話。
第1回・第2回で放送された「アイスランドのシンデレラ」と第6回・第7回で放送された「インドのシンデレラ」が前後編です。
作品は全体的にとてもリリカルなのですが、中尾幸世さんと銀粉蝶さんが淡々と話されることもあり、作品全体が落ち着いた雰囲気です。
そのため、一見分かりづらいのですが、良く聞くと、重く、残酷な要素が多いのが内容上の特徴になっています。
ただ、もともと童話とか民話とかは本当は結構残酷なものが多いのかも知れません。
「シンデレラ」なのでどの話しも一応、ハッピーエンドなのが救いでしょうか。

回数 タイトル 一言
1 アイスランドのシンデラレラ 前半で完結しても良かった話だが、後半も一波乱、二波乱。それにしても、靴を履かせるために踵を削る、母親に娘の肉を食べさせる、火薬を使って爆殺するなど、やたらと残酷な内容。
2
3 タイのシンデレラ 途中で本当に死んでしまうシンデレラと、それでもストーリーは続いて、結局ハッピーエンドになる展開は斬新。
4 日本のシンデレラ さすがに日本のシンデレラにはガラスの靴も舞踏会も出てこない。シンデレラの両手が切断されてしまうという展開は「タイ」以上に衝撃的。
5 フィンランドのシンデレラ 継母は登場しないが意地悪は姉は健在。一番、愚かな者が幸せをつかむ、何が賢くて何が愚かなのかはわからない。ちょっと考えさせられた。最近「一番伸びるのは、素直な頑張り屋さんだなあ」とつくづく思う。
6 インドのシンデレラ シンデレラが二人いるのは、それほど重要なポイントではなかった。最後に中尾さんも言っていたが王様が来ない方が幸せだったかも知れない。それにしてもなぜシャコ?
7
8 ドイツのシンデレラ こどもの首を切るとか、スープにするとか、これまた結構残酷。また、いじめられるのは男の子という特殊なパターン。何となくシンデレラというより猿蟹合戦風。
9 ジャワのシンデレラ こちらは王子様が登場しないパターン。運命を決めるのは山姥。義理の姉がシンデレラの真似をしようとするが…というのは昔話によくあるパターンだと思う。
10 イタリアのシンデレラ 一見、最も正統的なシンデレラストーリーに見えるが、よく考えると実はシンデレラ自身が一番最初にとんでもない行動をしているのがすべての原因だったりする。

あまりにリリカルな内容で、本来私があまり好きなパターンの作品ではないのですが、典型的なシンデレラストーリーと比べて、どこが違うかという視点で聴いているとなかなか楽しめました。
私は音源を持っていないのですが、パートⅠ、パートⅡも聞いてみたいと感じました。
もしお持ちの方がいらっしゃいましたら、お聞かせいただけると嬉しいです。

出演者は、伝説のパートタイム女優・中尾幸世さんと、銀粉蝶さんのお二人。
中尾さんについては熱心なファンがいるので、詳しく知りたい方は以下をご確認くださった方が良いと思います。
TVドラマでは佐々木昭一郎さん演出のものにだけ5本出演された中尾さんですが、ラジオドラマには結構出演されており、本ブログでは過去、「赤糸で縫い閉じられた物語」を紹介済みです。

(外部リンク:微音空間)http://www.bion.sakura.ne.jp/

また、芸名が印象的な銀粉蝶さんは、2016年7月に「オリガ・モリソヴナの反語法」で久しぶりにNHK-FMの帯ドラマに出演されました。
本記事は「オリガ・モリソヴナの反語法」に連動して書いてみたというのが真相です。

なお、本作品の次に放送された東理夫さん作の「さよならの春」で「カフェテラスのふたり」は終了することになります。
1978年に市村正親さん主演の「銀河鉄道999」でスタートした「ふたりの部屋」に始まる帯ドラマの枠はひとまずここで終了し、NHK-FMの帯ドラマは、よりエンタメ色の強い「アドベンチャーロード」に一本化されます。
しかし、アドベンチャーロードの後番組として1990年に始まった「サウンド夢工房」において、「ふたり」系の番組でよくつくられていたリリカルだったりカジュアルだったりする作品群が復活することになります。


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タランの白鳥 原作:神沢利子(青春アドベンチャー)

作品:タランの白鳥
番組:青春アドベンチャー
格付:A+
分類:幻想(その他)
初出:2015年12月14日~12月18日(全5回)
原作:神沢利子
脚色:長田育恵
演出:藤井靖
主演:海宝直人

「お前さんは、どこから来なさった?」
オホーツク海に浮かぶ北の島。
雪吹を避けるために寄させてもらった炉端で老婆が語り始める。
「何か話をしてあげよう。この村に伝わる話。オルドンの息子モコトルの物語。モコトルは神と戦い、白鳥に愛された…」

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本ラジオドラマ放送時点で91歳(1924年生まれ)。
日本児童文学界の長老のひとりでもある神沢利子さんの児童文学作品を原作とするラジオドラマが、この「タランの白鳥」です。
多くの文学賞を受賞している神沢さんですが、この「タランの白鳥」の原作も1990年に産経児童出版分化賞の大賞を受賞している作品です。
なお、この賞の大賞受賞作が青春アドベンチャーでラジオドラマ化されるのは初めてですが、他の賞や推薦作であれば採用例は多く、「風神秘抄」(JR賞)、「精霊の守り人」(ニッポン放送賞)、「カラフル」・「穴(HOLES)」・「スーツケース・キッド~バイバイわたしのおうち」(賞)、「鬼の橋」(推薦作)と、産経児童出版文化賞関連ですでに6作品も取り上げられており、隠れた青春アドベンチャーの重要供給源となっています。

さて、昔は青春アドベンチャーの年末といえば「年忘れ青春アドベンチャー・干支シリーズ」でしたが、2012年の12月第1週に「アンデルセンの雪の女王」が再放送され(ただしこの年はそのあとに「やけっぱちのマリア」があった)て以降は、2013年の「クリスマス・キャロル」、2014年の「びりっかすの神さま」と、質の高い児童文学作品で締めるのが恒例になりつつあります。
その中でも、本作品は、特に年の瀬にふさわしい詩情溢れる、品の良い作品です。
この品の良い抒情性を象徴するのがヒロイン「むすめ」(結局、最後まで固有名詞は出て来ない)を演じる石川由依さんの歌声。
本作品、分量はそれほど多くはないものの、要所要所に石川さんの歌が挟まります。
これが日高哲英さんの民族音楽っぽいBGMや抑えた効果音とあいまってすばらしい童話世界を構築しています。
それにしても青春アドベンチャーでは「風神秘抄」や「砂漠の歌姫」など、やたらと歌の印象が強い石川由依さん。
本作品を含め3作品とも藤井靖さんの演出作品なので、藤井さんが特別に石川さんの声と歌を買っているのだと思います。

その他の演者については、主人公モコトルを演じる海宝直人さんは劇団四季のライオンキング(※)を始めとする多くのミュージカルにも出演経験がある方で、こちらも本作品において歌うようにセリフを話すシーンがあり、ストレートプレイの部分を含めてなかなかの熱演です。
海宝さんといえば、名作「DIVE!!」(2003年)を思い出しますが、あれからもう12年も経っているのですな!
そして、本作品の出演陣で忘れてならないのは、呪い士(まじないし)マダイタを演じる千葉哲也さんの「呪い」や「恨み」・「嫉妬」などといった負の要素を象徴する寒気がするような演技。
こういった土着的な負の要素もまた童話や昔話には欠かせない要素だと思います。

こういった童話や昔話的な児童文学を原作とする作品、また、キャラクターが突然歌い始めてしまうミュージカル風の作品は、個人的にはあまり好きではありません。
しかし、本作品は、伝統的な暮らしを続ける北方の名もない寒村(作中では明言されていないが原作者の生まれたサハリンを舞台にしていると思われる)の雰囲気づくりに、全5回を通じて成功してます。
また、ストーリー面でも、童話的には結末が最初から見えてしまっている面があるものの、聴いていると場面ごとには先が読みづらい意外な展開が続き飽きさせないものになっています。
期待していなかったのですが、1年を締めくくるに足る、落ち着いた良作でした。



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