青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

サヨナラおもちゃ箱 原作:谷山浩子(アドベンチャーロード)

作品:サヨナラおもちゃ箱
番組:アドベンチャーロード(ミッドナイト・ファンタジー・ドラマ)
格付:B
分類:幻想(その他)
初出:1987年8月17日~8月21日(全5回)
原作:谷山浩子
脚色:湯本香樹実
音楽:谷山浩子、石井明
演出:松本順
主演:南果歩

リリコとタコが結婚して1週間。
新婚生活は思い描いていたのと全然違う。
タコは私の生活を破壊した!好きなように暮らしたい!
リリコがそう思ってしまったのは確かだけど、タコにいなくなって欲しいなんて思わなかった。
タコを取り戻したい。
リリコは人形たちと共にタコを探す不思議な旅に出た。

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本作品「サヨナラおもちゃ箱」は、シンガーソングライター谷山浩子さんの不思議な物語を原作とするラジオドラマです。
放送されたのは「ミッドナイト・ファンタジー・ドラマ」という枠で、本作品と「コロンブス1号地球発進」の2作品が連続で放送されました。
放送は、番組名のとおり深夜11時30分からで、かつ20分×5回という特殊なフォーマットでしたので、一応特番扱いだと思います。
ただ、この2作品が放送された1987年8月17日~8月21日及び8月24日~8月28日の10日間は、当時レギュラー放送されていた「アドベンチャーロード」が休止された時期にあたり(「大いなる冒険」(再放送)と「さらばアフリカの女王」の間)、代わりに「サヨナラおもちゃ箱」と「コロンブス1号地球発信」が放送されていたわけですので、実質的にはアドベンチャーロードの一部といっても良かろうと思います。

ちなみに、谷山浩子さんの小説は、「悲しみの時計少女」(1992年)、「電報配達人がやって来る」(1991年)など、1990年代の「サウンド夢工房」時代に原作として多用されていた印象があるのですが、本作品と同年1月にFMシアター枠(単発ドラマ枠)で放送された「不思議の国のヒロコの不思議」がNHK-FMにおける谷山浩子作品の嚆矢になったものと思います。
ところで、NHK-FMのラジオドラマにおける谷山さん原作作品の特徴といえば、音楽として谷山さんご自身の楽曲が使われることが多いこと。
その中でも本作品は、歌詞を聴きとってインターネットで検索してもヒットしない曲が多数。
すなわち、本作品は音楽として、1987年にサンリオから出版された小説版「サヨナラおもちゃ箱」に合う既存の曲(「月日の鏡 」など)も使いつつ、新たにこのラジオドラマのために作詞、作曲したうえで歌唱したものが使われているようです。
そもそもメインテーマ曲の「扉をたたいて」自体が本作品のためのオリジナル曲であり、CDには収録されていません。
そのほか、ひたすら理不尽な歌詞が続く「弱いものいじめの歌」など、谷山浩子さんのブラックな一面が垣間見られる怪曲もオリジナル。
本作品中のほかはライブなどでしか聴くことができない貴重な楽曲たちです。

さて、内容に話を移しますと、一言でいうと本作品は谷山作品の定番の「1回ごとに異なった不思議な世界を巡る」系の作品です。
作中の表現を使えば「人形の国を飛び石みたいにしていく」作品であり、「ネムコとポトトと白い子馬」(1990年)などに似た構成です。
主人公のリリコ(演:南果歩さん・渡辺謙さんの奥さまですね)が、犬の陶器人形パイ(演:宮川一朗太さん)や針金人形のプーキー(演:柳沢慎吾さん!)を始めとするさまざまな人形とともに、旦那さんのタコ(演:塩沢兼人さん)と「ガラスの心臓」を探して様々な不思議な世界を回っていきます。
この辺は「不思議な話が大好き」な人とそうでもない人で興味がわかれるところかと思いますが、何だかよくわからないファンタジックな終わり方をする谷山作品が多い中、「サヨナラおもちゃ箱」というタイトルのとおり、自分の狭い世界から脱却し現実と折り合いをつけるという現実的な終わり方をする本作品は、後者の方々にも受け入れやすい作品だと思います。
そして、いずれのタイプの方であってもなかなか多士済々な出演者には興味をそそられるところかと思います。
上記の宮川さんや柳沢さん、塩沢さんのほかにも、岡本茉利さん(山田洋次監督作品の常連であり、「ヤッターマン」のアイちゃん(ヤッターマン2号))、浜村純さん(300本以上の映画に出演した日本映画史に残る名バイプレイヤー)、高木均さん(ムーミンパパ、トトロ)、菅井きんさん(必殺仕事人で中村主水を「婿殿!」といびる姑)、銀河万丈さん(開運何でも探偵団のナレーション)などなど。
まとまりのないような、あるような素晴らしい配役です。
特に楽しいのが最終回の配役紹介。
主演の南果歩さんが、コンサートで歌手がバンドメンバーを紹介するような形式でひとりづつ名前を呼び、呼ばれた役者が作中の印象的なセリフを一言ずつ話してから自己紹介。
銀河番外地 運び屋サム」の沖田浩之さんの締めもそうだったのですが、南果歩さんの適度に肩の抜けた話し方も含めて、作品が終わった~という雰囲気が出ているエンディングはとてもいいですね。

なお、本作品は翌1988年に再編集され、FMシアター枠の単発ドラマ「サヨナラおもちゃ箱デラックス(DX)」として1時間半の編集版が放送されています。


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10人のシンデレラ パートⅢ 作:湯本香樹実(カフェテラスのふたり)

作品:10人のシンデレラ パートⅢ
番組:カフェテラスのふたり
格付:B
分類:幻想(その他)
初出:1988年2月29日~3月11日(全10回)
原案:山室静
作 :湯本香樹実
演出:角岡正美
主演:中尾幸世、銀粉蝶

「シンデレラ」といえば、今ではすっかりディズニーアニメがイメージされる訳ですが、もともとは世界中に類似の話が伝わっている民間伝承なのだそうです。
その範囲はとてつもなく広く深く、西欧のみならず中国にも類似の話があり、古くは紀元前1世紀にギリシアの歴史家ストラボンが記録したエジプトが舞台の話にまで遡る。
どの話も継母や義姉にいじめれたり、王子や王様に見初められたり、何かの道具を切っ掛けに幸せになったりといった基本的な構造は同じです。
そして、17世紀にフランスの文学者シャルル・ペローが、「ガラスの靴」や「かぼちゃの馬車」といった要素を取り入れたのものが、ディズニーのシンデレラの原型になりました。
この話に、これほど広汎な人々に受け入れられるに値する如何なる普遍的な価値があったのか、また、出所がひとつだとするとどのように伝播したのか、興味は尽きないところです。

さて、本作品「10人のシンデレラ」はそのような世界中に散らばったシンデレラのバリエーションをラジオドラマにした作品です。
本作品が放送された「カフェテラスのふたり」という番組は、本作品のようなリリカルな作品も多く、童話を題材にしているという点では「女たちの15の伝説/グリム幻想」も同様の作品でした。
本作品の元ネタは山室静さんの「世界のシンデレラ物語」(新潮選書)で、本作品ではこの中の8編を、脚本家の湯本香樹実さんが脚色(構成)しています。
湯本さんは非常に多くのNHK-FMのラジオドラマの脚色を担当されている方で、青春アドベンチャーの記念すべき第1作「14歳のエンゲージ」も湯本さんの脚色作品でした。

なお、「カフェテラスのふたり」では、合計3回、「10人のシンデレラ」という作品が放送されています。
1986年7月と1987年7月、そして1988年2月~3月。
それぞれの回がどのような内容だったのかは、いまひとつ判然としないのですが、ネットで調べてみると、1986年7月の作品が高樹沙耶さんと倉崎青児さんの出演、1987年7月の作品(「パートⅡ」と表記されている資料もある)が山下花奈さんの出演、1988年2~3月の作品(「完結編」や「総集編」と表記されている資料もある)が中尾幸世さんと銀粉蝶さんの出演とされていますので、出演者からすると今回紹介する作品は、最後の「完結編」だと思います。
ただし、作品中では「完結編」とは特に言っておらず、最終回で「パートⅢ」といっていますので、本ブログでもそのように表記しています。
何はともあれ、このパートⅢで紹介する「シンデレラ」は以下の全8話。
第1回・第2回で放送された「アイスランドのシンデレラ」と第6回・第7回で放送された「インドのシンデレラ」が前後編です。
作品は全体的にとてもリリカルなのですが、中尾幸世さんと銀粉蝶さんが淡々と話されることもあり、作品全体が落ち着いた雰囲気です。
そのため、一見分かりづらいのですが、良く聞くと、重く、残酷な要素が多いのが内容上の特徴になっています。
ただ、もともと童話とか民話とかは本当は結構残酷なものが多いのかも知れません。
「シンデレラ」なのでどの話しも一応、ハッピーエンドなのが救いでしょうか。

回数 タイトル 一言
1 アイスランドのシンデラレラ 前半で完結しても良かった話だが、後半も一波乱、二波乱。それにしても、靴を履かせるために踵を削る、母親に娘の肉を食べさせる、火薬を使って爆殺するなど、やたらと残酷な内容。
2
3 タイのシンデレラ 途中で本当に死んでしまうシンデレラと、それでもストーリーは続いて、結局ハッピーエンドになる展開は斬新。
4 日本のシンデレラ さすがに日本のシンデレラにはガラスの靴も舞踏会も出てこない。シンデレラの両手が切断されてしまうという展開は「タイ」以上に衝撃的。
5 フィンランドのシンデレラ 継母は登場しないが意地悪は姉は健在。一番、愚かな者が幸せをつかむ、何が賢くて何が愚かなのかはわからない。ちょっと考えさせられた。最近「一番伸びるのは、素直な頑張り屋さんだなあ」とつくづく思う。
6 インドのシンデレラ シンデレラが二人いるのは、それほど重要なポイントではなかった。最後に中尾さんも言っていたが王様が来ない方が幸せだったかも知れない。それにしてもなぜシャコ?
7
8 ドイツのシンデレラ こどもの首を切るとか、スープにするとか、これまた結構残酷。また、いじめられるのは男の子という特殊なパターン。何となくシンデレラというより猿蟹合戦風。
9 ジャワのシンデレラ こちらは王子様が登場しないパターン。運命を決めるのは山姥。義理の姉がシンデレラの真似をしようとするが…というのは昔話によくあるパターンだと思う。
10 イタリアのシンデレラ 一見、最も正統的なシンデレラストーリーに見えるが、よく考えると実はシンデレラ自身が一番最初にとんでもない行動をしているのがすべての原因だったりする。

あまりにリリカルな内容で、本来私があまり好きなパターンの作品ではないのですが、典型的なシンデレラストーリーと比べて、どこが違うかという視点で聴いているとなかなか楽しめました。
私は音源を持っていないのですが、パートⅠ、パートⅡも聞いてみたいと感じました。
もしお持ちの方がいらっしゃいましたら、お聞かせいただけると嬉しいです。

出演者は、伝説のパートタイム女優・中尾幸世さんと、銀粉蝶さんのお二人。
中尾さんについては熱心なファンがいるので、詳しく知りたい方は以下をご確認くださった方が良いと思います。
TVドラマでは佐々木昭一郎さん演出のものにだけ5本出演された中尾さんですが、ラジオドラマには結構出演されており、本ブログでは過去、「赤糸で縫い閉じられた物語」を紹介済みです。

(外部リンク:微音空間)http://www.bion.sakura.ne.jp/

また、芸名が印象的な銀粉蝶さんは、2016年7月に「オリガ・モリソヴナの反語法」で久しぶりにNHK-FMの帯ドラマに出演されました。
本記事は「オリガ・モリソヴナの反語法」に連動して書いてみたというのが真相です。

なお、本作品の次に放送された東理夫さん作の「さよならの春」で「カフェテラスのふたり」は終了することになります。
1978年に市村正親さん主演の「銀河鉄道999」でスタートした「ふたりの部屋」に始まる帯ドラマの枠はひとまずここで終了し、NHK-FMの帯ドラマは、よりエンタメ色の強い「アドベンチャーロード」に一本化されます。
しかし、アドベンチャーロードの後番組として1990年に始まった「サウンド夢工房」において、「ふたり」系の番組でよくつくられていたリリカルだったりカジュアルだったりする作品群が復活することになります。


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