青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

さだまさしの自分症候群(カフェテラスのふたり)

作品:さだまさしの自分症候群
番組:カフェテラスのふたり
格付:B
分類:多ジャンル
初出:1986年5月19日~5月23日(全5回)
原作:さだまさし
脚色:湯本香樹実
演出:(不明)
主演:小林聡美、太川陽介

本作品「さだまさしの自分症候群」は、NHK-FMの「カフェテラスのふたり」という番組で1986年5月に放送された作品で、シンガーソングライターのさだまさしさんの原作・歌をもとにしたラジオドラマです。
この「自分症候群」というタイトルは、本作品の前年に大ヒットした、さださんのシングル「恋愛症候群」(性格には「恋愛症候群-その発病及び傾向と対策に関する一考察-」)に乗っかったものだと思います。
ちなみに、本作品の2か月後には、本作品の続編ともいえる「さだまさしの青春症候群」が放送されています。

さて、さだまさしさんといえば、ご存知のとおり1970年代・1980年代に大人気だったシンガーソングライターで、「精霊流し」、「関白宣言」、「親父の一番長い日」、「北の国から~遥かなる大地より~」、「恋愛症候群」など数々の名曲を世に送り出しています。
抒情的な詩の印象が強いさださんですが、一方で「恋愛症候群」などコミカルな作品もあり、学生時代、落語研究会に所属していたというのも、頷ける話です。
いずれにしろ、さださんの魅力はもちろんメロディラインにもあるのですが、それと同程度に歌詞(さださん流にいうと「歌詩」)にもあります。
後に、「精霊流し」、「眉山」など、TVドラマや映画で大ヒットした作品の原作小説を手掛けることになるさださんですが、歌詩にしろ小説にしろ、もともと言葉による表現に並々ならぬ関心があったものと思われます。
本作品の原作も、前年の1985年に発刊された、さださんによる同名の短編小説&エッセイ集なのですが、これは実はさださんのオリジナル・アルバム「自分症候群」と同時発売されたものです。
この時期、まだ、さださんは一般的には小説家として認知されていなかったものの、すでに歌手であり小説家であるというハイブリッドな活動をスタートさせていたと言えると思います。

さて、「カフェテラスのふたり」は1回10分の番組でした。
本作品は5回構成でしたので、1話完結の作品が5話放送されたことになります。
原作小説を読んだことがないので原作のすべてをラジオドラマ化されたかどうかはわからないのですが、もととなったオリジナルアルバムに収録されていた12の楽曲タイトルのうち、「8つ目の青春」、「Final Count Down」、「上海小夜曲」、「長崎BREEZE」、「草枕」、「夢一匁」、「もーひとつの恋愛症候群」を除いた5タイトルが作品になっています。
いずれも人生のあるシーンを描いた作品ですが、さださんらしいユーモアも溢れています。
個人的にはラジオドラマにオムニバス作品はあまり期待していないのですが、この「自分症候群」はひと作品ひと作品、なかなか好感が持てる作品でした。
各話のタイトル、ジャンル、格付け、粗筋、一言は以下のとおりです。

話数 タイトル ジャンル 格付け 粗筋 一言
1 風が伝えた愛の唄 幻想(日本) A 「最初の名はアダム」そんなフレーズが何故か頭に浮かんだ… 生れ変りを題材にしたよくあるストーリーなのに悪くない。言葉の使い方が上手いからか。
2 Bye Bye Blue Bird 幻想(日本) B 世界中の「幸福学者」が日本に集まった。果たして幸福とは何なのか。議論が始まった。 各属性に、いかにもな説明を付けていく「恋愛症候群」的構成。日本代表の行動が?
3 沈吟(ピアニッシモ) 恋愛 B- 財布に余裕もないのに参加してしまったテニスサークルの合宿。練習試合が始まったが。 ごく短い時間を舞台にした、わずかな心の動きを題材にした歌のような作品。
4 サイボーグ・サイボーグ 幻想(日本) B 酔った部下が変なことを言い出した。声を出す自動販売機に惚れているだと? 素っ頓狂な話だが、ラストはどこか切ない。
5 ねこ背のたぬき コメディ B- 「昔のことは言わないで。」バーで飲む男女。何やら浅からぬ因縁があるようだが… ハンカチで鼻をかむ、大きなゲップなど下品。でもこれは伏線で最後にオチがある。

さて、本作品の出演者は小林聡美さんと太川陽介さん。
「カフェテラスのふたり」という番組名のとおり出演者は基本的にお二人だけです。
小林聡美さんは、一時期、NHK-FMのラジオドラマに結構出演されいました。 すでに紹介済みの「カフェテラスのふたり」の作品の中では「ザ・素ちゃんズ・ワールド」と「星へ行く船」にも出演されています。
このうち「ザ・素ちゃんズ・ワールド」については、本作品と同様に太川陽介さんとのセット出演でした。

また、太川さんは第4話で課長と部下の両方を演じ分けられていたのはなかなか見事です。
そういえば、太川陽介さんと言えば最近、テレビ東京の「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」で再ブレイクしましたが、この人気シリーズからは2017年1月放送の第25弾で卒業されました。
楽しみにしていたので残念ですが、相棒の蛭子能収さんが69歳ということを考えると、あの過酷な旅ではやむを得ないところだと思います。

なお、実はさだまさしさんご自身も本作品にちょっとだけ出演されています。
各回冒頭の僅かな時間ですが、留守番電話の応対メッセージという演出で、エッセーっぽい一言を語られています。


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あなたに似た自画像 作:新井まさみ他(青春アドベンチャー)

作品:あなたに似た自画像
番組:青春アドベンチャー
格付:B-
分類:多ジャンル
初出:2016年10年17日~10月28日(全10回)
作 :(下表のとおり)
演出:小見山佳典
主演:国広富之ほか(詳細は下表のとおり)

少し前の青春アドベンチャーでは、「不思議屋シリーズ」(不思議屋百貨店、不思議屋旅行代理店など)や「ライフシリーズ」(インテリア・ライフアクア・ライフなど)といった脚本競作によるオムニバス作品が頻繁に制作されていました。
2015年に「フラワー・ライフ」が制作されていますので、一応、ライフシリーズは継続しているようですが、昨今、タイトルの一部を共用するオムニバスシリーズはすっかり下火になっています。
そんな中で制作された、この「あなたに似た自画像」は2016年の新作で唯一のオリジナル脚本のオムニバス短篇ドラマ作品です。
この「あなたに似た自画像」というタイトルで思い出されるのは、2014年に同じ小見山佳典さんの演出で制作された「あなたがいる場所」。
「おっ、新しく『あなた』シリーズが始まったのか?」と思ったのですが、よく考えたら「あなたがいる場所」は、全話、沢木耕太郎さんの原作がある作品でした。
よって、この「あなたに似た自画像」と「あなたがいる場所」は似て非なる形態の作品ではあるのですが、オムニバス作品であることは共通しており、今後、「あなた」シリーズとして継続していく可能性はあると思います。
そういえば青春アドベンチャーとは縁の深い藤井青銅さんの小説に「あなたに似た街」というものがあります。
この作品もオムニバス作品のようですので、これを使えば簡単にシリーズっぽくなりますね。

さて、本作品は毎回冒頭に「人生はコンフリクト。不合理で矛盾に満ちている」と言葉から始まり、人生の一断面を切り取ったようなドラマが始まります。
なお、公式ホームページでは「現代の家族のありようを10人の脚本家が描く」と書いてありますが、「家族のありよう」とはあまり関係ない作品も結構含まれています。
また、「あなたがいる場所」との比較で言うと、「あなたがいる場所」が基本的に不思議な出来事は起こらない現実的なドラマであるのに対して、「あなたに似た自画像」には一定のファンタジー要素が織り込まれている作品が多いことが特徴です。
各回の概要は以下のとおりです。

話数 タイトル 脚色 主演俳優 ジャンル 格付 粗筋 一言
1 いない、いない、ばあ 新井まさみ 国広富之 幻想(日本) B 育児休暇を取ったが空回りばかりの男。そこに小学生の女の子が育児ボランティアにきたのだが。 これはズルイ。本当にベタベタの展開だがそれでもしんみりさせられてしまう。子を持つ親には反則ものの作品。
2 ある日、ヤモリは縁側で 山田文恵 永宝千晶 幻想(日本) B- 男と別れた。しかし、彼と住むはずだった家にひとりで引っ越すとそこには男の声が。しゃべっているのは、ヤモリ? 子離れできない母親から、責任感を持たない男に乗り換えても、共依存からは脱せない。そもそも自立するなら空いている祖母の家ではなく、自力で部屋を借りるべき。
3 あのひとのカナリア 中澤香織 手塚祐介 少年 AA 渡り廊下で、見覚えない眼鏡の女子に急に手を引かれた。「全然変わっていないね。トモ君が私にしたこと、忘れてないから…」 小飯塚貴世江さんの演技が期待どおりの気持ち悪さで絶品。後味の悪さがとても気に入った作品(ん?、褒めていますよ!)
4 欲望は転移する 石原理恵子 植田真介 職業 B 人と関わるのは煩わしい。今日も森田さんにお昼の自由な時間を邪魔された。いい加減にして欲しい… 友達が少なくてもいい。人に頼ってもいい。どちらも正解。でも、一歩を踏み出す勇気は大切なもの。ありきたりな話だが、最後の上田さんの演技はちょっと好ましかった。
5 息子までの飛距離 時乃真帆 浅野雅博 日常 C 幼い息子との距離の取り方がわからない。これではまるで、あんなに嫌っていた父親と同じじゃないか。 ひねりのないお涙頂戴もの。自分の言動を親のせいにする主人公も、「器用じゃない」を言い訳にする親も好きになれない。浅野さんの演技はさすがだが。
6 車の羽音 中庭順子 前東美菜子 日常 B 育児と仕事の両立に悩んで母に相談したら、なぜか高齢の祖父に運転をやめるように説得に行けと言われた。 F1ドライバーのスターリング・モスは「男には下手だと認めたくないことが2つある。運転とセックスだ」といったらしい。
7 誠実な浮気 田中攝 吉見一豊 日常 C 育児ノイローゼ気味だった妻が最近、機嫌がいい。薄っすら化粧もしている。機嫌がいいのは良いが何だか気になる。 主婦の孤独(?)と工場の環境変化を関連付けられても、こじつけにしか聞えない。結末は諧謔的にしたのかもしれないが、単に後味が悪い。
8 夜明け前の朝日 湯川立子 手塚祐介 幻想(日本) B- 青いビー玉みたいだけど、ぼくは生まれる前の魂。明日までにママを探さなければいけないんだ。 パパは探してくれないのか(涙)。それにしても、今時、不動産はノリで買わない方がいいと思います。
9 愛の相対性理論 中治人 谷川清美 恋愛 C+ 「このままではあなた方の愛は破たんする」突然、話に割って入ってきた女。「しかし二人の愛は永遠に不滅なんです!」 相対性理論を社会心理学に絡める?浮気はどうなったの?何でみんなで歌うの?意外な展開は楽しめたが、ストーリーはさっぱりわからない。
10 ひと部屋ホテル 吉田海輝 国広富之 幻想(日本) B- 離婚協議の心労で全く執筆が進まない作家がようやく見つけた場所は、地下に客室が一部屋だけのホテルだった。 第9話から一転、こちらはオチが読めすぎるなあ、なお、こちらの小飯塚さんはいたってまとも。ベテラン女優さんらしい演技。

国広富之さんと手塚祐介さんが2回ずつ主演を務められています。
手塚祐介さんは「雨にもまけず粗茶一服」に続き2作品連続の出演です。
そろそろ手塚さんを主役に据えた長編があっても良いように感じます。
また、国広富之さんは「あなたがいる場所」でも2回主役を務められていました。
本作品でも第1回と最終回で主演していることも併せると、やはりこの作品の看板は国広富之さんだと思います。
ただ、個人的に一番印象的だったのは第3回「あのひとのカナリア」に出演されている小飯塚貴世江さん。
双子島の秘密」に出演された時もとても気になっていたのですが、残念ながら「双子島の秘密」では終盤に存在感がなくなってしまう役でした。
「あのひとのカナリア」では、終始、ぐさっとくるセリフを独特の声と演技で連発しており、一種独特の迫力があります。
例えば、「遠くから見ると人の笑った顔ってバカに見えるね」、「謝れば許して貰える世界観か」、「罪悪感って人をコントロールできるね」、「あたし罪悪感についてはちょっと詳しいよ」などなど。素敵です。
この回のシナリオを書かれたのは中澤香織さんなのですが、今回の脚本家10人のなかでは田中攝さん(「なくしたものたちの国」、「いまはむかし~竹取異聞」、「クラバート」)と並んで、数少ない青春アドベンチャーで長編の脚色経験のある方(「リテイク・シックスティーン」)。
さすがに経験の違いを感じます。
それにしてもこのお二人を始めとして、今回の脚本家陣に何と女性の多いことか。
この分野でも女性の活躍は著しいですね。


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