青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

不思議屋不動産 作:山本むつみ他(青春アドベンチャー)

作品:不思議屋不動産
番組:青春アドベンチャー
格付:C+
分類:多ジャンル
初出:2003年9月8日~9月19日(全10回)
作 :(下表のとおり)
演出:小林武
主演:大鶴義丹、馬渕英里何

1999年から2007年に掛けて前8作品が制作された「不思議屋シリーズ」。
いずれの作品も、各作品ごとに、ある種類のお店又は業種を共通テーマとした、1回15分完結のオリジナル脚本ラジオドラマ10本を束ねた(「不思議屋博物館」のみ全15回)オムニバス作品でした。
今回紹介する「不思議屋不動産」はその第5弾として2003年に放送された作品ですが、このブログで紹介する順番では8番目。
すなわち、これで全8作品の紹介が終わったことになります。

さて、この「不思議屋不動産」の共通テーマとなっている業種はずばり「不動産屋」。
ただし、「不動産屋に紹介された」と言いさえすれば、どんな場所でも舞台になってしまうので、統一感を出すにはあまり効果的なテーマではなかったようにも感じます。
個人的には不動産業ならではの面白さが表現できている作品がひとつもなかったのが残念。
そもそも「不動産屋」というテーマを与えられて「仲介」しか思いつかないのは少し発想が貧困だと思います。
デベロッパーやハウスメーカー、不動産投資業者、リフォーム業者なんかでも面白い作品は十分につくれると思うのですが。
結果として、良くいえばバラエティーに富んだ、悪く言えばまとまりのない作品群になっています。
各回のタイトル、脚本家、ジャンル、格付け、粗筋、一言は以下のとおりです。

話数 タイトル 作者 ジャンル 格付け 粗筋 一言
1 トイレの神様 山本むつみ タイムスリップ C+ 易者もしている不動産屋から紹介された部屋は「トイレが素晴らしい」のだというが。 「紫姑神」(しこしん)とか「何媚」(かび)とかは実際にある伝承らしい。
2 ホテル・カルフォルニア 勝栄 日常 C+ 婚約が破談になった女性が紹介されたのは修善寺にあるホテルカリフォルニアだった。 不動産屋がホテルを紹介する、というには如何にも苦しい。
3 よもつひらさか 渥美珠巳 幻想(日本) B+ 恋人が交通事故で死んだ。あれから私は覚めない悲しい夢を見ているようだ。 確かに「上る」という表現でアレっと思った。ただオチが見えていてもそれなりの出来。
4 ウェディングベルは南の島で 黒沼美佳子 幻想(日本) C 同棲中のカップルの喧嘩。枕が押し入れに飛び込んだ瞬間、部屋が丸ごと移動した! 脈絡のない展開だし、子供を出すのもあざとい。3回目は帰ってこられないのでは?
5 静かな部屋 前原一磨 SF(日本) C+ 男は売れない作曲家だが最近一段と創作に身が入らない。特に騒音が気になるのだが。 身勝手な主人公の言動が不快。展開も予想通り。
6 心を見る部屋 さわだみきお コメディ C リストラで銀行を退職させられた男が選んだのはメーターだらけの部屋。 一応コメディなのだろうが、「ふーん」という感じで、さして笑えない。
7 また会う日まで、会える時まで 橋本信之 幻想(日本) C 不思議屋不動産は亡くなった人にも物件を斡旋している。時には生者との同居も。 幽霊との同居は創作ではよくある。一応、あの曲に結びつけているが、これも苦しい。
8 エンドロールには早すぎる 塩塚夢 幻想(日本) C 5回目の結婚記念日。妻とすれ違う夫は昔、恋人からもらった絵はがきを見つけた。 何とも陳腐な話し。どうやって戻ったのか一切描かずいきなり3カ月後?
9 壁の中 中江有里 幻想(日本) C+ 小さい頃はお菓子が上手に作れる母親になるのが夢だった。どこで間違えたのだろう… 「寂しさを肥料にした」というフレーズは印象的だが。古い家が語りかけるのは陳腐。
10 素敵なアジト 安形眞司 コメディ C その女性のお客が探していた物件は悪の組織でも利用で来る本格的なアジトだった。 唐突に悪魔と言われても… 「正義の名の下に殺戮」という言葉だけは深いが。


出演者は大鶴義丹(おおつる・ぎたん)さん、馬渕英里何(まぶち・えりか)さんと永井一郎さんの3人。
他の「不思議屋シリーズ」と同様に、大鶴さんが男性の出演者を、馬渕さんが女性の出演者を演じ、永井さんが「不思議屋」の店主を務めるのが典型的なパターンです。
馬渕さんは他の青春アドベンチャー作品では「あでやかな落日」や「ヤッサン」に出演されていますが、大鶴さんは本作品が青春アドベンチャーで唯一の出演作品なのではないかと思います。
ちなみに大鶴さんに限らず、一度不思議屋シリーズに出演された方は、同シリーズの他の作品には出演されていません。
唯一の例外は「不思議屋博物館」と「不思議屋貿易商」の2作品に出演された尾美としのりさんです。
そして、大鶴さん、馬渕さん以上に印象的なのは、不思議屋シリーズ全体を象徴するといって良い永井一郎さんの演技。
本作品を聴いていると、先年他界された永井一郎さんの名調子がもう聞けないなんてとても信じられません…

さて、本作品、「不思議屋」の名のとおり、基本的にはどの回もファンタジー要素が強い作品です。
…といえば聞こえは良いのですが、ご都合主義で荒唐無稽と感じられることが多いのも事実。
実は本作品を演出された小林武さんは、本作品以外で、

○「プラハの春」 …「プラハの春事件」をテーマにした現代史もの
○「あでやかな落日」 …逢坂剛さん原作の業界内幕もの
○「ベルリンの秋」 …青春アドベンチャー屈指のドロドロ恋愛ドラマ
○「闘う女。~そんな女のこんな生き方」 …ノンフェクション原作の格闘技挑戦もの

と、通常の青春アドベンチャーより高い年齢層を対象とした作品を制作されている方。
不思議屋シリーズは若干、小林さんの志向とは異なった作品だったかも知れません。

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不思議屋百貨店 作:北阪昌人ほか(青春アドベンチャー)

作品:不思議屋百貨店
番組:青春アドベンチャー
格付:B
分類:多ジャンル
初出:1999年11月22日~12月3日(全10回)
作 :(下表のとおり)
演出:藤井靖
主演:千葉哲也、中島ひろ子

本日は不思議屋百貨店へようこそおいで下さいました。
手前どもでは皆様方に人生の不思議なひとときを過ごしていただくための、様々な商品をご用意してお待ち申し上げております。
おっと、今日もちょっと変わったものをお求めのお客様がいらしたようです…

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この「不思議屋百貨店」は1999年から2007年に掛けて合計8作品が作られることになる脚本家競作のオリジナル短篇作品集「不思議屋シリーズ」の記念すべき第1作です。
上に書いた各回冒頭の決まり文句は、少しずつ形をかえながら、名声優・永井一郎さんの声とともに「不思議シリーズ」のお約束として受け継がれていくことになります。
この「不思議屋シリーズ」、各作品の主演は、あくまで各作品ごとに変わる男女1対の俳優さんだと思うのですが、シリーズ全作品に同じ立ち位置(案内人)で出演されてる永井さんは「シリーズ全体の主演」と言えると思います。

本作品はまた、現在、青春アドベンチャーにおいて主力演出家として活躍されている藤井靖さんの青春アドベンチャーにおけるデビュー作でもあります。
藤井さんの青春アドベンチャーにおける演出作品は、1999年11月の本作品から2017年11月末の「天下城」までで43作品あり、2012年以降は年5作品以上のハイペースで担当をされています。
このペースは1990年代に異常な量の作品を演出されていた川口泰典さんには及びませんが、共同演出が多かった川口さんと比較すると、藤井さんは単独名義の作品がほとんど(共同なのは木村明広さんと演出されている「家守綺譚」と「風神秘抄」だけ)ですので、川口さんに劣らないハイペースだと思います。
でもなぜか不思議屋シリーズで担当されたのは、この「不思議屋百貨店」だけなんですけどね。

さて、シリーズのフォーマットは、この第1作でほとんど完成しています。
フォーマットとは、まず出演者は男女1名ずつと永井一郎さんの3名。
そして、各回が1話で完結するオリジナル脚本のショートドラマです。
ただ、後のシリーズでは、1名1作品のことは多いのに対して、本作品では基本的に1名2作品(北阪昌人さん、井出真理さん、高木美津子さん。森治美さん)で、藤井青銅さんとミラーカク子さんだけが1作品ずつです。
なお、脚本は本作品では青春アドベンチャーでは実績のある方々が務めていらっしゃいますが、後の作品は新人の登竜門的な位置づけになり、実績のない脚本家を登用することも増えていきました。
各回のタイトル、脚本家、ジャンル、格付け、内容及び一言は以下のとおりです。

話数 タイトル 作者 ジャンル 格付け 粗筋 一言
1 月に着がえて 北阪昌人 幻想(日本) B+ 「今夜閉店してから翌朝開店するまで間だけこのデパートを買いたい」女性の真意は? う〜んドキドキしますなあ。そして意外と詩的だ。シリーズの第1作として悪くない。
2 ビールは二人で 井出真理 日常 C+ 結婚式の引き出物を選びに不思議屋百貨店にやってきたふたり。でもすれ違ってばかり。 日常の些細な一コマを描いた作品。問題も何となく解決してしまう、まさに日常系。
3 シェフ 森治美 職業 B- シェフが出会った女性は極端な偏食家。美味しいものを知らないなんて損している? 全然「不思議」ではないし、「百貨店」が主な舞台であるわけでもない。
4 AからFまで 高木美津子 コメディ B- 女に誕生日プレゼンは何がいいと聞いたら「下着」とのこと。これは大変だ。 「AからFまで」下着のサイズともうひとつ。永井さんの推薦は「ガーター付き網タイツ」。
5 懐かしのメロディー 藤井青銅 コメディ B- 買った皿をその場で割る客。あるメロディを思い出すために必要な行為だというのだが。 藤井青銅さんも不思議屋でも書いていたんだ!藤井さんらしいコテコテのオチ。
6 ワイン 北阪昌人 グルメ A- 友人を偲ぶためにワインを買った帰り道。同じワインを探している女性に出会った。 ワインが小道具だが典型的な日常もの。この頃、ユーゴが戦場だった時期なんだよなあ。
7 あの頃の背中 井出真理 日常 B+ 悪阻の気分転換で入った百貨店。画材屋で20歳の自分が描かれている絵を見つけた。 劇的な展開になりそうでならない。落ち着いた大人向きの作品。
8 にぎやかな仏像 高木美津子 幻想(日本) C+ 買い物で発散しようと訪れた百貨店。見つけたのはわがままで毒舌な仏像…だった! 仏像の正体は少し唐突ではないか?急に「お○い○ゃん」にしてもあまり感動は…
9 約束 ミラーカク子 恋愛 B あの時からなるべく避けていた場所。肩を叩いてきたのは、あんなに憎んでいたはずの彼。 誤解とその氷解。これほど普通の「ドラマ」らしい作品もないかも。
10 贈り物 森治美 職業 B- 百貨店のクリスマスセール。定年の大先輩のため成功させようと張り切る若手社員だが。 催事のアイデアもトラブルを乗り越えるアイデアも、何となくイマイチなのが残念。

日常生活や仕事をテーマにした作品が多く、「不思議屋」の名前にも関わらず、非現実的な出来事が起きない回が大部分を占めます。
そして後の不思議屋シリーズで散見される、子供向け?の幼稚な作品は見受けられません。
「不思議屋」シリーズでも最も「普通のドラマ」色が強い作品と言えるでしょう。
その雰囲気をより強固にしているのが、千葉哲也さん(「タランの白鳥」)・中島ひろ子さん(「ふたり」)の出演者のお二人。
お二人の、とにかくクセのない声と個性を殺したしゃべり方が、本作品を自然に聴ける、聴きやすい作品にしています。
特に千葉さんは、後年の青春アドベンチャー「タランの白鳥」や「白狐魔記 蒙古の波」、「らせん階段」で、かなりクセの強い演技・ナレーションを披露していますので、本作品はは意図的にアクを抑えてものと思います。
さすがです。

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