青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

永島敏行さんから岡田准一さんへ。「神々の山嶺」も世代交代。

【青春アドベンチャー・メディアミック情報②】神々の山嶺

1998年にNHK-FMでラジオドラマ化された夢枕獏さん原作の「神々の山嶺」(かみがみのいただき)が、「エヴェレスト 神々の山嶺」として、2016年3月12日から公開されています。
ちなみに映画化に併せて、現在発刊されている角川文庫版の原作も「エヴェレスト 神々の山嶺」に改題されています。
正直、そこまでしなくても良いのではないかとは思いますが…

さて、映画版において、主役の深町誠を演じるのは俳優の岡田准一さん、孤高の天才クライマー羽生丈二(はぶ・じょうじ)を演じるのは俳優の阿部寛さん、ヒロインの岸涼子を演じるのは女優の尾野真千子さんです。
下記のとおりラジオドラマ版もなかなかの有名俳優さんをそろえていたのですが、並べてみると時代の移り変わりを感じますね。
ちなみに阿部寛さんは、NHK-FMのラジオドラマで言うと「新宿鮫・氷舞」に主演されています。
尾野真千子さんはFMシアターの「私は、先生」に主演。
岡田准一さんにも是非、ご出演をお願いしたいところですが、有名になりすぎて難しいかな。
なにせ、すでに大河ドラマ(軍師官兵衛)にも主演されていますしね。

役名 ラジオドラマ 映画
深町誠 永島敏行 岡田准一
羽生丈二 江守徹 阿部寛
岸涼子 野村真美 尾野真千子

なお、ラジオドラマ版「神々の山嶺」は、「特集オーディオドラマ」と銘打たれて、1988年4月29日~5月2日にかけて、1日40分・全4回の変則的な枠で放送されました。
そのため、このラジオドラマは、「青春アドベンチャー」系とも「FMシアター」系とも言い難い作品です。
NHK-FMとしてもとても気合の入ったラジオドラマでした。
ちなみに青春アドベンチャーでは、本作品のほかにも、「北壁の死闘」(原作:ボブ・ラングレー)、「垂直の記憶」(原作:山野井泰史)などのクライミングドラマの傑作が放送されています。
また、1983年の「ふたりの部屋」まで遡れば「ザイルのふたり」(原作:鴫満則、鴫秋子、全10話中の第3話のみ2015年「今日は一日ラジオドラマ三昧」で再放送)、1985年のアドベンチャーロードでは「脱獄山脈」(原作:太田蘭三)などの作品もありました。
登山ものはラジオドラマに向いていると思います。

最後にやはり紹介しておきたいのは谷口ジローさんが作画をされた漫画版。
異常に書きこまれた背景は実写とはまた違ったリアリティがあります。
是非、ご一読いただきたい傑作です。

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神々の山嶺 原作:夢枕獏(青春アドベンチャー/FMシアター)

作品:神々の山嶺
番組:青春アドベンチャー・FMシアター(特集オーディオドラマ)
格付:AA-
分類:冒険(山岳海洋)
初出:1998年4月29日~5月2日(全4回)
原作:夢枕獏
脚色:高谷信之
演出:江澤俊彦
主演:永島敏行

チベットではサガルマータ、ネパールではチョモランマ、そして英語名はエベレスト。
1993年6月、この神々の名前を持つ山の頂を目指した日本の登山隊を待っていたのは、2名の死者をだしたうえので敗退という最悪の結果であった。
登山隊に参加したカメラマン深町誠は、失意の中、それでも支払わなければならない登山の借金の返済のため、カトマンズに残って写真を撮り続けていた。
そして現地人の店先で売られていた、ある古いカメラに気がつく。
それは1924年に、初のエベレスト登頂を目指して帰らなかった名登山家ジョージ・マロリーが、エベレストに持って行ったものと同形式のカメラであった。
それが本物のマロリーのカメラであれば、エベレスト登山史上最大の謎 -マロリーはエベレスト初登頂に成功していたのか- が判明するかもしれない。
興奮してカメラを持ち帰った深町だが、彼の目の前に羽生丈二(はぶ・じょうじ)が現れることによってミステリーは一層深まっていく。
羽生丈二。
かつて日本のトップクライマーでありながら日本山岳界から忽然と姿を消した異端の登山家。
マロリーはエベレストに登頂していたのか、そして、羽生丈二はこのカメラとどういう関係があるのか。
ふたつのミステリーを追う深町の旅が始まった。

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夢枕獏さん原作の山岳ミステリーを原作とするラジオドラマです。
夢枕さんといえば伝奇小説や格闘小説などのケレンミのある娯楽小説で有名です。
でも、作家になる前に山小屋で働いていた経験もあるそうで、本格的な山岳冒険小説を書くのもごく自然な流れです。
この「神々の山嶺(いただき)」の原作は、近年の山岳小説の傑作として知られており、写実的な作風で有名な谷口ジローさんの画で漫画化もされています。
さて、青春アドベンチャー系の番組で、クライミングや登山が重要な要素となる作品としては、既に「脱獄山脈」、「北壁の死闘」、「垂直の記憶」を紹介済みです。
そのほか、ふたりの部屋時代には「ザイルのふたり」なんて作品もあったようですが、残念ながら、私は聴いたことがありませんし、今となっては聴くことはほとんど不可能に近いと思います。
一方、ラジオドラマ以外のジャンルをみると、まず小説の世界では、本作の原作のほか、古典とも言える井上靖さんの「氷壁」、谷甲州さんの「遙かなり神々の座」、新田次郎さんの「孤高の人」、真保裕一さんの「ホワイト・アウト」など、ちょっと記憶を辿っただけでも多くの名作が思い出されます。
また、漫画についても、最近完結した作品だけを見ても、時代設定を大胆に現在に移した坂本眞一さんの「孤高の人」や、毎回のように人が死ぬのに荒んだ雰囲気がまったくない石塚真一さんの「岳 みんなの山」など、多くの良作が生み出されています。

「垂直の記憶」の記事でも書きましたが、私は全くクライミングの経験がなく、そもそもそんな根性は持ち合わせていないのですが、どういう訳かこのジャンルの作品を鑑賞するのは大好きです。
上に書いたものはどの作品も、胸が熱くなる良作だと思います。
山岳冒険ものを未体験の皆様、是非、聴いてみて(読んでみて)下さい。

さて、本作品は、冒頭で紹介したふたつのミステリーを解き明かすために、深町が日本とネパールを旅することにより進んでいきます。
途中、回想シーンなどで登山のシーンが挟まりますが、本格的な登山シーンは、第4回の放送を待たなくてはいけません。
深町が、そして羽生が、どのような冒険に臨むのか、全てを超えた二人がどこに辿り着くのか、それは聴いてのお楽しみと言うことにしましょう。
ただ、本作品は羽生の変質的なまでの山への情熱(そこに山があるからではない、オレがここにいるからだ!)と、極限状態で精神的に追い詰められていく様子が、やや原作より弱いと感じました。
羽生の山での精神状態は最後のメモでは描かれていますが、それ以前のシーンでは今ひとつです。
もう少し江守さんの変質的な演技で独白するようなシーンが多くても良かった気がします。
とはいえ、この辺はラジオドラマとしてのボリューム上の限界もあると思いし、それほど大きなマイナスではありませんでした。
また、ちょっと残念なのは物語のラスト。
実は、本作品が放送された翌年、何と現実世界においてマロリーの遺体が発見されました(ただしカメラは見つからず)。
それを受けて、原作の文庫版では現実と整合するようにほんの少しだけラストが変更されています。
また漫画版はラストにやや長めのおまけがついたようです。
本作品のラストも良いのですが、その後まで描いている漫画版のラストもなかなかのようです(後日読みました。追記をご参照ください)。
本作品の放送タイミングからはあり得ないのですが、漫画版のラストのバージョンも聴きたいなあと思います。


本作品の出演は、主役の深町役が永島敏行さん、そして羽生役が江守徹さんです。
永島敏行さんと江守徹さんですよ!
NHKのこの作品に対する気合いが窺えます。
槍ヶ岳、北岳、富士山等に登山経験のある野村真美さんがヒロインの岸涼子を演じているのも意図的なのかも知れません。
また、気合いと言えばこの作品は放送形態も独特でした。
本作品は「特集オーディオドラマ」と銘打って放送されています。
このような名称が付く場合、通常、本来FMシアターが放送される土曜日の枠を使って(多くの場合は時間を拡大して)放送されるのですが、本作品はそうではありません。
水曜日から土曜日の4日間連続で各40分で放送されているのです。
主として平日の夜に帯ドラマとして放送されている点からいえば、青春アドベンチャーの変形とも考えられます。
実際、実質的に帯ドラマでありながら通常放送用の番組名を使用しなかった作品(「いつか猫になる日まで」や「サラマンダー殲滅」)もたくさんありますし、なかには「アルジャーノンに花束を」のように30分枠で放送された作品もあります。
では青春アドベンチャー系の特番かというとそうでもありません。
実は、本作品が放送されている期間中、青春アドベンチャーもFMシアターを休止されず、並行して放送されていたのです。
4月29日から5月1日の3日間は青春アドベンチャーの「天使のリール」が、5月2日はFMシアターの「野原の小道」が通常どおり放送され、その後の時間帯である23時15分から別にこの作品が放送されていたのです。
今となってはなかなか考えられない充実したラジオドラマの放送ラインナップです。
当時が羨ましいです。


本作品のスタッフは、脚色が高谷信之さんで、演出が江澤俊彦さんです。
高谷さんと言えば「摩天楼の身代金」、「長く孤独な狙撃」、「サラマンダー殲滅」等のハード作品が多い印象です。
江澤さんも「最後の惑星」、「着陸拒否」、「鬼の橋」、「魔術師」などハードな作品が多いイメージがあります。
本作品はそのお二人が組むに相応しい作品ではありますが、実はもうひと作品、このお二人が組んだ作品を見つけてしまいました。
これが何と花井愛子さんの「夢の旅」。
花井愛子さんと言えばティーンエイジャーの少女向けの小説で有名な方であり、「夢の旅」も、かなりあま―いお話しでった記憶があります。
意外ですね。

さてさて、イモトアヤコさんのマナスル登頂プロジェクトにかこつけて、登山系の作品を2作品連続で紹介しました。
何はともあれ、イモトさんには無事に帰ってきて欲しいものです。





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