青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

「封神演義」再アニメ化。ただし藤崎竜版。石橋蓮司さんの姜子牙が聴けるわけではない。

【青春アドベンチャー・メディアミック情報⑦】封神演義

青春アドベンチャーでは、1998年から2000年にかけて、全60回という空前の規模でラジオドラマ化された「封神演義」について、2度目のアニメ化発表されました。


といっても、例によって安能務さん「訳」の原作小説がアニメ化されるわけではなく、藤崎竜さんが少年週刊ジャンプで1996年から2000年にかけて連載していた漫画版が直接の原作です。
藤崎竜さんは、現在連載している「銀河英雄伝説」(田中芳樹)でもそうなのですが、原作をかなり翻案するのが特徴の方。
「封神演義」も、藤崎版は「世界の真実の姿」について原作とは全く異なった設定がなされ、結末すら全く異なったものとなっていました。
そもそも藤崎版は少年誌の読者層に併せて(あるいは「腐」向けに)、ビジュアルイメージが美少年・美青年のオンパレードです。
姜子牙(太公望)役が石橋蓮司さん、聞仲役が大友龍三郎さん、紂王役が藤岡弘、さんという重厚な布陣の青春アドベンチャー版とは似ても似つきません。
とはいえ青春アドベンチャー版がアニメ声優を使っていないわけでは全くなく、野沢雅子さん、増山江威子さん、永井一郎さん、大塚周夫さん、大山のぶ代さん、田の中勇さん、高木均さん、熊倉一雄さんが共演しているという意味でオールドアニメファンにとっても驚愕の作品でした。

というわけで、同じ安能版が原作とは言え、このアニメとラジオドラマ版は全くの別ものいってもよいのですが、せっかくの再アニメ化ですので、主要キャストの比較だけしておきたいと思います。
なお、「旧アニメ」は1999年に全26話でTVアニメ化された作品「仙界伝 封神演義」です。
この「旧アニメ」も藤崎版の漫画がベースですが、漫画が連載中であったこともあり、漫画ともストーリー展開が異なっていたようです。
考えてみると1999年はそれぞれストーリーが異なる3つの封神演義、すなわち藤崎版の漫画が連載中、青春アドベンチャー版ラジオドラマが放送中、藤崎版を原作としたTVアニメも放送中、というわけのわからない状況にあったことになります。

役名 旧アニメ
TVアニメ「仙界伝 封神演義」
新アニメ
TVアニメ「封神演義(仮)」
ラジオドラマ
青春アドベンチャー「封神演義」
姜子牙(太公望) 優希 比呂 小野 賢章 石橋 蓮司
四不象 増川 洋一 櫻井 孝宏
那咤 宮田 幸季 野沢 雅子
楊戩 千葉 進歩 有馬克明(織田優成)
黄 飛虎 田中 一成 大和田 伸也
紂王 松田 佑貴 藤岡 弘
妲己(千年の女狐) かかず ゆみ 増山江威子
聞仲 松山 鷹志 前野 智昭 大友 龍三郎
その他 元始天尊 大木 民夫 仲谷 昇
白鶴童子 小林和矢(宇宙人) 大山のぶ代
雲中子 石川 大介 田の中 勇
趙公明 子安 武人 近藤 正臣
申公豹 石田 彰 壤 晴彦

新アニメで主演される小野賢章さんは、子役時代に青春アドベンチャーの「光の島」、「風神秘抄」などに出演され、最近(2015年)も「シブちゃん」に主演されています。
もともと劇団四季のミュージカル「ライオンキング」で、主役シンバの子供時代(ヤングシンバ)を演じているなど、子供のころから実力派の方。
本作品でもご活躍を期待したいものです。

(参考リンク)
・青春アドベンチャー版「封神演義」の記事
・青春アドベンチャー版「封神演義2 朝廷軍の逆襲」の記事
・青春アドベンチャー版「封神演義3 易姓革命」の記事

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しゃばけ 原作:畠中恵(青春アドベンチャー)

作品:しゃばけ
番組:青春アドベンチャー
格付:AA+
分類:伝奇
初出:2002年4月15日~4月26日(全回)
原作:畠中恵
脚色:佐藤ひろみ
演出:松本順
主演:金子貴俊

廻船問屋・長崎屋の若旦那・一太郎(いちたろう)は数えで17歳。
普通の人の目には見えない「妖」(あやかし)を見ることが出来る不思議な体質の持ち主だ。
一太郎は、なかなかの美男子だが、並外れてひ弱。
長崎屋が同時に経営している薬種問屋(薬屋)を任されてはいるものの、彼を溺愛する両親や手代の佐助・仁吉たちに甘やかされて育った。
生来、気が優しい一太郎は、周りの好意をありがたく受け止めているが、あまりに甘やかされることに少しだけ不満もある。
そんなある日、帰りが遅くなった一太郎は、道ばたで不審な人物に切りつけられる。
事件に人ならぬ物の蔭を感じ取る一太郎。
不審に思った彼は、仲の良い「妖」たちと共に事件の真相を探り始めるのだが、やがてそれは多くの薬種問屋を巻き込む事件に発展していくのだった。

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本作品「しゃばけ」は畠中恵さんの代表作であり、第13回の日本ファンタジーノベル大賞を受賞した小説を原作とするラジオドラマです。
この小説「しゃばけ」は大好評だったようで、その後シリーズ化され、2017年5月現在、合計13作品が刊行されています。
第1弾の「しゃばけ」及び第5弾の「うそうそ」は、2007年と2008年にTVドラマ化もされておりますので、それでご存知の方も多いかと思います。
青春アドベンチャーでは2002年にこの「しゃばけ」をラジオドラマ化したほか、2004年には、第2弾の「ぬしさまへ」(短編集)を「しゃばけ2」としてラジオドラマ化しました。
ちなみにTVドラマ版ではNEWSの手越祐也さん、青春アドベンチャー版では金子貴俊さんという、「世界の果てまでイッテQ」出演者がそれぞれ主人公の一太郎を演じています。
一太郎の「なかなかの美男子だが、並外れてひ弱」のうち、「美男子」という部分を重視したのがTVドラマ版のキャスティング、「ひ弱」という部分を暗くならないように少し剽軽に表現することを重視したのが青春アドベンチャー版のキャスティングである様に感じます。

さて、前置きはこのくらいにして、本作品の内容紹介に移ります。
本作品の舞台は江戸時代の江戸。
実は江戸時代の江戸を舞台にした作品は青春アドベンチャーでは稀少で、本作品及び続編の「しゃばけ2」の後は、2006年の「風になった男」(原作「始祖鳥記」)、2007年の「尾張春風伝」、2012年の「蜩ノ記」、2014年の「鷲の歌」など、江戸時代を描いた作品ではあるものの場所は江戸以外を主な舞台とする作品が続きました。
江戸を主な舞台にした作品は本シリーズのほかは、2016年の「エド魔女奇譚」・「白狐魔記 元禄の雪」くらいです。
不思議にも本作品を含めて江戸を主舞台にした3作品はすべて「歴史・時代もの」ではなく、超常要素アリの「伝奇もの」ばかり。
逆にベタベタの捕物帖なんかがあっても良い気もします。

話しを本作品に戻しますと、本作品のタイトル「しゃばけ」を漢字に直すと「娑婆気」。
何やらおどろおどろしい漢字ですが、栄誉や損得、快楽など俗世間における様々な欲望にとらわれる心のことだそうです。
作品中でも「人はみんな、娑婆気を抱えている」などと使われたりします。
本作品は人の血に狂った妖怪を退治する物語ではあるのですが、その背後にあるのは妖怪の邪悪さというより、しゃばけに囚われた人間の業。
江戸時代という身分制度が厳しい時代で、ままならぬ人生を送る人の情念こそが事件の真の原因なのでしょう。
…などと堅苦しく書きましたが、この作品の魅力はそんなところにありません。
一太郎のまわりの妖怪たちはどこか楽し気で魅力がいっぱい。
あくまで忠実で誠実な佐助(犬神)や仁吉(白沢)。
にぎやかでかわいい鳴家(やなり)たち。
どこか斜に構えた「屏風のぞき」。
それぞれが個性的で、一太郎が切り盛りする「薬種問屋・長崎屋」はまさに「不思議屋薬品店」状態(笑)。
青春アドベンチャーでは「封神演義」や「ミヨリの森」、「世界でたったひとりの子」など、人ならざる存在にアニメ中心の専業声優さんをあてることによってうまく雰囲気を出している作品も多いのですが、本作品では大竹周作さん、中村まことさん、頭師孝雄さん、江良潤さん、柳澤慎一さんといった俳優さんたちがなかなか良い雰囲気で演じられています。
また、子鬼の鳴家(やなり)達は、下山彩那さん、鈴木つばささん、石川由依さん、鈴木里彩さん、小川李子さんの5人で演じられているのですが、今思えば本作品がのちに「風神秘抄」(2006年)、「砂漠の歌姫」(2011年)、「月蝕島の魔物」(2012年)などで主役・ヒロインを演じられることになる石川由依さん(当時12歳で劇団ひまわり所属の子役)の青春アドベンチャーデビュー作だったのかもしれません。
そして、金子さんが演じる一太郎が、軽やかにあくまで飄々と彼らに付き合っていることも、独特の楽し気な世界観を構築するのに役立っていると思います。
TVドラマではこの妖怪たちはSFX(?)を使って描かれていたわけですが、本ラジオドラマ版ではわずかなBGMとSE、そしてせりふ回しだけで十分魅力的に描かれており、中途半端なSFXより人間の想像力の方がよほど効果的と感じました。
せりふといえば、本作品は、先年亡くなられた名声優・永井一郎さん(青春アドベンチャーでは「不思議屋」シリーズや「夏の魔術」でおなじみ)がナレーションを担当されているのも魅力です。
金子貴俊さんをはじめとする出演者、SE、BGMに、この永井さんのナレーションが加わり、オーディオドラマとして完成度の高いパッケージができていると感じます。

また、ストーリー面でも「家守奇譚」のような不思議な「場」の雰囲気を楽しむだけの作品ではなく、(あくまで超常現象が存在することを前提としたものではありますが)謎解き的な面白さもあり、「女王の百年密室」や「悲しみの時計少女」に似た楽しみ方もできる作品となっています。
なかなかの良作だと思います。


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