青春アドベンチャー雑記帳~オーディオドラマ・ラジオドラマの世界

NHK-FMのオーディオドラマ「青春アドベンチャー」の紹介ブログです。前身番組の「サウンド夢工房」・「アドベンチャーロード」等も含みます。一応「格付」するなど評価・評論風のことも書いていますが、堅い話はともかく雑談・脱線ありありで、オーディオドラマを中心とした楽しい世界を紹介します。リンクフリーです。

弾け!はじけろ!そろばん甲子園 作:東多江子(FMシアター)

作品:弾け!はじけろ!そろばん甲子園
番組:FMシアター
格付:A+
分類:スポーツ
初出:2015年7月11日(全1回)
作 :東多江子
演出:佐原裕貴
主演:朝倉あき

「もう、部活決めた?」
入学式の行われるこの日は、学校中が部活の勧誘活動で賑やかだ。
負けてはいられない。
わが「珠算(そろばん)部」は、現在、部員たったの2名。
部長を拝命してしまった私、北九州総合高校・商業科2年の古賀すずとしては、最低3名くらいは部員を集めたいところだ。
…でも集まらない。
それはそうだろう、こんな地味な部活、選ぶ方が変だ。
こうなったら2名でもいい。
いや1名でもいいから、有段者の新入部員がどうしても欲しい。
目標としている珠算の全国大会、いわゆる「そろばん甲子園」の団体戦出場には3名が必要なのだ。
このままでは出場することすら出来ない!

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本ラジオドラマ「弾け!はじけろ!そろばん甲子園」は、2015年7月にNHK-FMのFMシアターで放送されたラジオドラマです。
テーマはずばり「そろばん」!
何とも地味なテーマと思われますが、競技会も行われ、ライバル高校なんかもちゃんとでてくる、れっきとした勝負の世界の話です。
主人公・すずの表現を借りれば「机の上のスプリント競技」なのだそうで、作中で複利計算など、簿記の知識が必要な複雑な問題をそろばんで(しかも超速で)解く姿を聴いていると、それもなるほどと思えてきます。
この言葉に敬意を表して、本ブログでのジャンルは「スポーツ」にしてみました。
物語全体を見ると、「そろばん甲子園」(というか「そろばん甲子園」に出場するための県大会)に向かって集約していく「スポーツもの」的な展開が縦糸になり、序盤から前振りをしているすずの家族環境が横糸になって進んでいきます。
終盤に「すずはなぜ珠算をやっているのか」という1点で両者が結びついて、県大会につながっていくあたりは王道の展開です。
正直、FMシアターの50分の枠で多くのドラマを盛り込むことは不可能です。
そのため、1年間の部活動を描くことにはやはり限界を感じざるを得ず、全体的には薄味な印象を持たざるを得ません。
しかし、濃い勝負エピソードが延々と続く内容ではなくても、身近な少年少女の成長物語として、気持ちのいい作品になっています。

さて、本作品の舞台となるのは、福岡県北九州市にある架空の高校「北九州総合高校」。
なぜ北九州かといえば、第一には本作品が福岡局の制作作品だからですが、脚本を書かれた東多江子(ひがし・たえこ)さんが北九州出身であることも大きな原因であると思います。
若戸大橋の景色を作品に入れる当たり、さすが地元の方ですね。
ここでちょっと本筋は外れるのですが、福岡地元ネタついでに「北九州総合高校」のモデルを探してみます。
作中から推測できる条件は、

① 北九州市に所在
② もともと商業高校だが、現在は普通科併設
③ 九州大学への合格者は滅多にでない程度の学力
④ ちょっと変わった名前

というところでしょうか。
これで検索をしてみた結果の私の結論は、ずばり「北九州市立高校」!
あたっているでしょうか?

閑話休題。
話を出演者に移しますと、まず主役の古賀すずを演じているのは、女優の朝倉あきさん。
青春アドベンチャーでの「放課後はミステリーとともに」、「ニコイナ食堂」など、FMシアターでの「想い出あずかります」、「紅いハンカチ」など、多くのラジオドラマに出演され、ラジオドラマファンに愛されている女優さんです。
2010年にTVドラマ「とめはねっ!鈴里高校書道部」で部活物での実績もありますので、本作品の演技も安心して聴くことが出来ます。
今回のすずは比較的悩みがちなキャラクターですが、終盤の「あっそっかぁ」という力の抜けたセリフあたりが、私が一番、朝倉さんらしくていいなあと思うセリフです。

その他、すずの友人の夏美役をモデルで女優の奈緒さん(旧芸名「本田なお」、福岡県出身)が、3人目の珠算部員・大迫を俳優の瀬上祐輝さん(熊本県出身)が、熱心だけど微妙に頼りない顧問の荒巻先生を俳優の渡部豪太さん(茨城県出身だけど祖父母が沖縄出身、「七帝柔道記」にもご出演)が演じています。
ちなみに朝倉さんも神奈川県出身ですが、ご両親は福岡県朝倉市のご出身とのこと。
主要キャスト全員が何ら九州とつながりがあるようで、福岡局としてもよく考えたキャストなのだと思います。

ところでこの記事を書くために、色々と調べているなかで、なんと「全国高等学校珠算競技大会(そろばん甲子園)は2009年の第55回大会で廃止された」とのニュースを見つけてしまいました。
「2009年に廃止されたのになんで2015年に題材にしたの?」
「そんなに珠算を題材にしたいなんて、東さんは結局珠算とどういう関係がある方だったの??」 
などと混乱してしまったのですが、さらに調べてみると「全国高等学校珠算・電卓競技大会」と名前を変えて続いている様子。
ほっと一安心です。


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夏・風・ライダー 原作:高千穂遥(FMアドベンチャー)

作品:夏・風・ライダー
番組:FMアドベンチャー
格付:AA
分類:スポーツ
初出:1985年1月21日~2月1日(全10回)
原作:高千穂遙
脚色:倉内均
演出:千葉守、竹内豊
主演:草野大悟

奥脇と一緒にオクワキエンジニアリングを立ち上げたのは、バイクが、とくにエンジンがただただ大好きだったからだ。
オクワキエンジニアリングの元を去ったのは、奥脇がパーツの製造販売に血道をあげ、いつしかマフラーしか弄れない毎日になってしまったからだ。
あれから9年。
今でも辞めたのが正解だったのか考えることがある。
オクワキエンジニアリングは早々にレースに参加するようになり、今では日本を代表するプライベーターと呼ばれるまでになった。
それに引き替え、俺は未だにしがないバイク屋の親父だ。
しかし、それも終わりだ。
俺も今年からレースに参戦する。
チーム“ノブ”といえば聞こえはいいが、まあ言ってみれば「町内会チーム」だ。
それでもレースはレース。
時は来たのだ。
夏の「鈴鹿4時間耐久ロードレース」まで全力で突っ走るまでだ。

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最近、読み返したんですよ!
何をって?
「ふたり鷹」ですよ、「ふたり鷹」。
人によっては「俺は『バリ伝』(=バリバリ伝説)の方が好きだった!」、「俺が印象的なのは『汚れた英雄』だ!」なんて人もいるかもしれないけど、いやーとにかく熱いですよね、ロードレースって。
同じモータースポーツでもカーレースとは、またひと味違った熱さ。
学生スポーツとか文化祭とか、そういったものに通じる熱さです。
金はかかるが4輪に比べれば何とか参加できてしまうという経済的な条件、そしてヘルメットとライダースーツだけで過酷な世界に飛び込んでいくという無防備さがロードレースものに「ギリギリ感」や「必死さ」を帯びさせているように感じます。
あまりロードレースにエモーショナルな期待をしても当事者には怒られてしまうかも知れませんが、やっぱり「鈴鹿4時間耐久ロードレース」は「バイク乗りの甲子園」なんですよね。

さて、本作品はSF作家として有名な高千穂遙さんの小説を原作とするラジオドラマです。
高千穂遙さんは、「クラッシャージョウ」でスペースオペラ、「美獣」でヒロイック・ファンタジーという、2ジャンルで日本初の作品を生み出した方です。
少し大げさかもしれませんが、日本SF史上に残るエンターテイメント作家といえると思います。
NHK-FMのラジオドラマでも、アドベンチャーロード時代に「銀河番外地・運び屋サム」、「黄金のアポロ」の2作品がラジオドラマ化されています。
高千穂さんは今でこそ自転車愛好家として知られていますが、昔はバイク好きとしても有名でした。
つまり、本作品は高千穂さんの趣味全開の作品であり、作品を聞いていてもバイク及びバイク文化に対する愛情があふれていることが感じられる作品です、
というのも、本作品の主人公はライダーではなくチームのオーナー。
本業も単なるバイク屋の親父です。
「昔は実は凄かった」という、よくある設定があるのはご愛敬ではありますが、過去に大事なことをやり残してきた中年親父にも、バイクは青春を運んできてくれるのです。
チームの結成、ライバルの出現、不調、事故、トラブル、そしてレース当日。
こうしてみると、典型的なスポーツものの展開です。
スポーツといえば、耐久レースは1台のマシンを複数のライダーが交代で乗り継ぐ、いわばリレー競技でもあり、「一瞬の風になれ」(4×100mリレー)や「風が強く吹いている」(駅伝)と同様のドラマ性もあります。
まさに主人公は親父だけど、実質的には青春スポーツもの。
目標の鈴鹿4時間耐久ロードレースが(もちろんそれ自体有名なレースではあるものの)極言すると8耐(鈴鹿8時間耐久ロードレース)の前座レースに過ぎないという「一流未満感」も、ギリギリあり得そうな感じがして良い舞台設定です。
だからこそ「ふたり鷹」や「バリバリ伝説」でも描かれているのでしょう。
本作品を一言で表すと「たった4時間の夏に捧げるための半年間」。
何ともリリカルにまとめることができる話です。

それにしても改めて思ったのですが、モータースポーツってラジオドラマにあっています。
モータースポーツの魅力のひとつはやはり「音」。
エグゾーストノートが響き渡るだけで作品世界に入ることができます。
モータースポーツを取り上げたラジオドラマはあまり聞かないのですが、これは狙い目だと思います。

さて、主人公の山﨑を演じるのは俳優の草野大悟さん。
本ブログでも「世紀の大冒険レース~アムンゼンとスコット」、「脱獄山脈」などの出演作をご紹介済みです。
本作品のわずか6年後、51歳の若さで亡くなられたのはとても残念です。、
また、ヒロインのゆかりとナレーションを担当したのは無名塾5期生の女優・原陽子さん、らしいのですが、いまひとつわかりません。
その他、中西良太さん(「いつか猫になる日まで」の水原役ですな)、五代高之さんあたりが主なキャストです。

一方、スタッフは、脚色が倉内均さんで、演出が千葉守さんと竹内豊さん。
はっきりとはしないのですが、倉内さんが後年「佐賀のがばいばあちゃん」(2006年)、「日本のいちばん長い夏」(2007年)などの映画の監督をされた方だとすると、本作品は倉内さんがテレビマンユニオンから独立し、テレビ制作会社ネクサスの設立に参加される時期の作品と言うことになります。
一方の千葉守さんは後年まで多くのNHK-FMのラジオドラマを演出されることになる方です。
後年は「おいしいコーヒーのいれ方」や「都会島のミラージュ」、「少年H」、「P」など、少しリリカルな日常っぽい作品のイメージが強くなるのですが、本作品は少しイメージが違いますね。
そういえば千葉さん演出の「武蔵野蹴球団」は「町内会チーム」という面で本作とよく似ていますが、同じトンデモ展開でも「バイエルンミュンヘン」より「4耐」の方が熱く感じられるのはなんでなんでしょうね。
また、もう一人の演出の竹内豊さんの演出作品と言えば「妖精作戦」!
その他、「魔弾の射手」、「黄金海峡」など印象的なエンタテイメント作品を多く演出されています。

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